前工程装置でシェア低下が続く日本勢、気を吐くキヤノンは希望となるか:湯之上隆のナノフォーカス(83)(1/4 ページ)
前工程用の半導体製造装置において日本メーカーのシェア低下が止まらない中、健闘しているのがキヤノンである。同社のナノインプリントリソグラフィ(NIL)技術は、光露光プロセスにパラダイムシフトを起こす可能性を秘めている。
コロナ特需終焉の不況から回復した前工程装置市場
2022年にコロナ特需が発生し、2023年にはその特需が終焉(しゅうえん)して半導体不況に突入した。その結果、ドライエッチング装置、検査装置、CVD装置をはじめとする多くの前工程装置の出荷額が減少した。しかし2024年には不況から回復し、ほとんどの装置で出荷額が増加に転じた。
なお、ここで、検査装置は外観検査装置と欠陥検査装置の合計、洗浄装置は枚葉式とバッチ式の合計として集計し、グラフを作成した(図1)。
次に、2024年における各種前工程装置の企業別シェア、欧米日のシェア、市場規模を1枚のスライドにまとめた(図2)。この図から以下の事実が読み取れる。
1)各種前工程装置のシェアはおおむね欧米日で独占されているが、その中で中国メーカーの台頭が目立つ。特にドライエッチング装置ではNAURA(6%)とAMEC(6%)、PVD装置ではNAURA(12%)が存在感を増している
2)市場規模が100億米ドルを超える装置は4種類あり、いずれも欧米メーカーが独占している。具体的には、244億米ドルの露光装置はASML(94.1%)、171億米ドルのドライエッチング装置は米Lam Researchと米Applied Materials(合計58.9%)、143億米ドルの外観検査装置は米KLAとApplied Materials(合計69.6%)、115億米ドルのCVD装置はApplied MaterialsとLam Research(合計62.3%)である
3)日本は、コータ・デベロッパ(94.5%)、縦型拡散炉などの熱処理装置(82.2%)、枚葉式洗浄装置(63.5%)、バッチ式洗浄装置(73.5%)、マスク検査装置(50%)、CD-SEM(65.5%)で過半のシェアを有している。しかし、これらの装置の市場規模は相対的に小さい
要するに、前工程装置市場はおおむね欧米日で独占されているが、100億米ドルを超える巨大市場は欧米メーカーが支配している。一方、日本は6種類の装置で過半のシェアを占めているものの、それらの市場規模は大きくない。では、この結果として前工程装置全体の地域別シェアはどのようになっているのか。
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