前工程装置でシェア低下が続く日本勢、気を吐くキヤノンは希望となるか:湯之上隆のナノフォーカス(83)(2/4 ページ)
前工程用の半導体製造装置において日本メーカーのシェア低下が止まらない中、健闘しているのがキヤノンである。同社のナノインプリントリソグラフィ(NIL)技術は、光露光プロセスにパラダイムシフトを起こす可能性を秘めている。
日本の前工程装置の地域別シェア低下が止まらない
その危機的状況に気付いたのは、2022年7月11日であった(拙著記事『実はシェアが急低下、危機の入り口に立つ日本の前工程装置産業』参照)。その後も経過を注意深く観察してきたが、事態は悪化の一途をたどっている。
図3は、2024年までの前工程装置全体における地域別シェアの推移を示すグラフである。これを見ると、日本は2010年頃までは米国とトップを争っていた。しかし2011年以降、シェアは急速に低下し、2023年には欧州にも抜かれて3位に転落、2024年には欧州との差がさらに拡大した。
2024年時点の地域別シェアは、米国44.3%、欧州29.2%、日本21.7%、中国3.4%、韓国1.4%である。なお、中国国内の前工程装置の出荷額は必ずしも正確に把握できているとは限らず、実際のシェアは3.4%を上回る可能性がある。仮にそうであれば、日本は米欧との差が広がるだけでなく、中国からの急速な追い上げを受けていることも考えられる。
では、なぜ2011年以降に日本のシェアが急激に低下したのか。その理由を探るため、2011年から2021〜2024年にかけての各種前工程装置のシェアを比較した(図4)。その結果、シェアが大きく向上したのはマスク検査装置のみであり、それ以外のほぼ全ての装置でシェアが低下していた。要するに、特定の装置分野ではなく、ほとんどの前工程装置のシェアが2011年以降に減少していることが、日本全体のシェア低下を招いたのである。
これは極めて厄介な問題である。なぜなら、全体的にシェア低下が進んでいるため、マスク検査装置のように一部の装置でシェアを伸ばしたとしても、全体の低下を補うことはできないからである。
筆者として言えることは「東京エレクトロン、スクリーン、荏原製作所、KOKUSAI、キヤノン、ニコン、日立ハイテク、レーザーテック、東京精密などの日本装置メーカー各社は、それぞれの分野でシェアの回復・拡大に向けた最大限の努力をお願いしたい」ということである。
このような中で、露光装置において、キヤノンが大きく健闘していることが明らかになった。次項でその詳細を論じる。
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