まるでボタン、でも平ら リアルさを追求する京セラのハプティクス技術:シグマのカメラにも採用(3/3 ページ)
京セラは、独自の触覚伝達(ハプティクス)技術「HAPTIVITY」の開発に注力している。HAPTIVITYは押圧をトリガーに触感を発生させる技術で、反応速度の速さや物理ボタンのようなリアルな触感が特徴だ。2025年4月にはシグマのカメラの操作部に採用されたことを発表している。HAPTIVITYの利点や活用例、今後の展望などを開発担当者に聞いた。
さらに付加価値を高める「HAPTIVITY i」
京セラは、HAPTIVITYの機能を生かしてさらにデザイン性を高められる技術「HAPTIVITY i」も提供している。これは、フィンランドに拠点を置くTectoTekが開発した3D射出成型エレクトロニクス技術「IMSE(Injection Molded Structural Electronics)」をHAPTIVITYに組み合わせたものだ。
IMSEは、電子部品を搭載したプリント回路基板を3D射出成型プラスチック内に封入してカプセル化する技術だ。従来は個別に組み合わせていた電子部品を一体化するので、薄型/軽量化に貢献し、部品の調達や管理の手間を削減できる。また、3D射出成型によってスタイリッシュなデザインが実現するほか、表面の加飾印刷もカスタマイズできる。
これをHAPTIVITYと組みわせたHAPTIVITY iはボタン触感と自由なデザインを両立できるので、高級家電の操作部の他、壁付けの給湯機/浴室リモコンなど薄型であることが要求される用途にも適する。立体部にも触感を持たせられるので、ゲーミングマウスや仮想現実(VR)/拡張現実(AR)機器、アーケードゲーム機やパチンコ台といった用途でも新しい機能とデザインが実現する。
「HAPTIVITY iは単にボタン代わりというよりも、新しい工業デザインを実現するものになることを期待している」(開発担当者)
「つるつる」「すべすべ」など多様な触感の再現を目指す
京セラは今後、HAPTIVITYの民生機器への搭載を想定し、大幅な小型化を進める方針だ。単にサイズを小さくすると振動させる力が低下し、リアルな触感からは遠ざかってしまうので、振動の大きさを維持しながらサイズを小さくするための研究開発を行っているという。また、強度を維持しながらの薄型化も進める。
現時点ではHAPTIVITYはボタン用途でのクリック感の再現に特化しているが、異なる触感の再現にも前向きだ。
「ハプティクス技術はこれから、もう一段向上していくと考えている。『つるつる』『すべすべ』といった触感のニーズにも応えられるデバイスを目指す」(開発担当者)
リアルな触感を再現できることから、遠隔医療への適用なども視野に入れ、新たな市場を探っていく計画だ。
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