NVIDIAとAMDが米政府に中国売上高の15%を支払い、影響は:「厄介な前例になる」と観測筋(1/2 ページ)
NVIDIAとAMDは「中国から得た売上高の15%を米国政府に支払う」という異例の契約に合意したとされるが、米国政府はそれに伴って、対中輸出規制の緩和にも合意しているとみられる。この契約は「厄介な前例」となり、今後の貿易戦争をさらに激化させる可能性がある。
米国EE Timesが取材したアナリストによると、NVIDIAとAMDは「中国から得た売上高の15%を米国政府に支払う」という異例の契約に合意したとされるが、米国政府はそれに伴って、輸出規制の緩和にも合意しているとみられる。
英国Financial Timesをはじめ、さまざまなニュースメディアが報じたところによると、NVIDIAとAMDは、米国政府との間で収益分配契約を締結したという。米国政府はこの件に関するコメントを発表していない。
NVIDIAはEE Timesの取材に対し、事前に準備した声明で「NVIDIAは世界市場へ参入していく上で、米国政府が策定する規則に従う。数カ月の間、中国にGPU『H20』を出荷していないが、輸出管理規則によって米国が中国や世界で競争できるようになると期待している。米国は、5Gが登場した頃の過ちを繰り返して通信分野のリーダーシップを失ってはならない。米国のAI技術スタックは、われわれが競争を繰り広げれば世界標準になり得るだろう」と述べている。
ドナルド・トランプ政権は2025年7月半ばに、H20の中国向け販売に対する輸出管理規則適用を撤回した。NVIDIAは「中国からの売上高の一部を米国政府に支払うのか」というEE Timesの質問には答えなかった。AMDも、EE Timesの問い合わせには応じていない。
異例の契約で大統領権力の新章が幕開けか
技術調査会社TechInsightsのバイスチェアマンを務めるDan Hutcheson氏は、EE Timesの取材に対し「政府がAMDの『MI308』とNVIDIAのH20に対する輸出規制を緩和し、そこから収益の分配を受けるという契約は、極めて異例だ。このようなトランプ政権の動きは、大統領権力の新たな章の幕開けを示唆するものだ」と述べている。
またHutcheson氏は「トランプ大統領は『関税が大好き』だと公言し、逆転関税を発明するという非常に独創的な手法に出た。特定の外国への販売に対し、特定の製品/企業に税金を課すという事例は、今まで聞いたことがない」と述べる。
Futurum GroupのリサーチディレクターであるRay Wang氏は、EE Timesの取材に対して「これは、全く前例がないとまでは言わないが、非常にまれな契約だといえる」と述べている。
「米国政府がAMD/NVIDIAから徴収した資金をどのように使うのかは依然として不明だが、世界規模の関税制度と並行して歳入を増やすための新たな手段になる可能性がある。とはいえ、輸出規制が現在も引き続き実施されていることから、トランプ政権が中国に対するAIチップの無制限販売を許可することはないだろう」(Wang氏)
2024年の売上高全体に占める中国の割合は、AMDで24%、NVIDIAで13%だった。トランプ大統領は、中国に対するNVIDIAのH20の売上高全体の約20%を徴収したい考えのようだ。
Reutersが報じたところによると、トランプ大統領は「H20は時代遅れの製品だ」と述べ、中国が販売禁止になったH20を大量に入手したとの見方を示唆したという。さらに、トランプ大統領が「いいか、私がNVIDIAと米国のために中国での販売を承認するなら、20%は欲しい」と発言したと報じた。
NVIDIAのCEOであるJensen Huang氏は、米中間で貿易戦争が激化する中で休戦を交渉すべく、ここ数カ月でワシントンD.C.と北京の間を何度も往復している。
今回の契約締結の背景にあるのは、トランプ大統領が米国への半導体輸入に最大100%の関税を課す考えであると発表したということだ。
Wells Fargoの半導体アナリストであるAaron Rakers氏は、米国のニュース専門チャンネルCNBCのインタビューの中で「NVIDIAと米国政府との契約は、中国における同社のH20の売上高が『何もないよりはましだ』ということを意味している」と語った。
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