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NVIDIAとAMDが米政府に中国売上高の15%を支払い、影響は:「厄介な前例になる」と観測筋(2/2 ページ)
NVIDIAとAMDは「中国から得た売上高の15%を米国政府に支払う」という異例の契約に合意したとされるが、米国政府はそれに伴って、対中輸出規制の緩和にも合意しているとみられる。この契約は「厄介な前例」となり、今後の貿易戦争をさらに激化させる可能性がある。
「厄介な前例」で信頼関係が崩れ、分断が深まるとの指摘も
市場調査会社Counterpoint ResearchのバイスプレジデントであるNeil Shah氏は、事前に準備した声明の中で、「この『異例の契約合意』は、短期的にも長期的にも、全ての関係者にとって厄介な前例となるだろう」と述べている。
Counterpoint Researchは「今回の契約によって貿易収支はある程度回復することになるが、財政的/地政学的には大きな代償を伴うことになる。同様の契約によって、一部の経済圏に対しても同様のアクセス料を適用する力を与えることになり、貿易戦争がさらに激化する可能性があるのだ」と付け加えた。
Shah氏は「こうした状況から、業界内の信頼関係が崩れつつあり、そのために経済圏全体で技術と貿易の断片化がさらに加速していくだろう」と述べている。
Wang氏は「トランプ政権は、以前に行われた中国政府との会談で譲歩を示したが、今後の交渉でもさらなる譲歩が引き出されるのかどうかは分からない」と述べる。
「今回の新たな段階が、中国との広範な技術競争政策の変換点であるとは思えないが、収益分配という手法が一度限りの例外なのか、それとも新しい政策パターンの始まりなのかを判断するために、注視していく必要がある」(Wang氏)
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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