「中国の小さなNVIDIA」、Cambriconの躍進が示す中国の野心:株価は中国市場で最高額に(1/2 ページ)
中国の北京に本拠を置く半導体メーカーであるCambricon Technologiesは、中国本土の株式市場において最も価値の高い銘柄へと躍進を遂げた。「中国の小さなNVIDIA」と称される同社のような企業の台頭は、既存プレイヤーに挑戦しAIチップ製造の未来を再構築しようとする中国の野心を浮き彫りにしている。
中国の北京に本拠を置く半導体メーカーであるCambricon Technologies(以下、Cambricon)は、中国本土の株式市場において最も価値の高い銘柄へと躍進を遂げた。これは、中国の資本市場に大きな変化が起きていて、投資家の関心が酒類などの伝統的な産業よりもAIチップに向いていることを示している。
熱狂を大きく後押ししたのは、DeepSeekの発表
2025年8月25日、Cambriconの株価は11.60%急騰して過去最高の1384.93元を記録。時価総額は5793億8000万元(約810億米ドル)に達した。その結果、著名な白酒メーカーであるKweichow Moutai(貴州茅台)を抜いて中国株式市場で最も高額な銘柄となったのだ。
上海証券取引所で取引されているCambricon株は、2025年に入って2倍以上に上昇し、過去12カ月で500%以上急騰した。現在の株価は過去の収益の4554倍という驚異的な水準で取引されている。
この堅調なパフォーマンスはアナリストからの圧倒的な信頼を反映していて、Goldman SachsやBernsteinを含む13社の証券会社のうち12社が「買い」推奨を出している。
「中国の小さなNVIDIA」と称されるCambriconの急成長は、技術的自給自足に向けた中国政府の積極的な取り組みと国内AIモデルの最近の進歩と深く絡み合っている。
この熱狂を大きく後押ししたのは、中国の杭州に拠点を置くAIスタートアップDeepSeekが、同社の最新モデルの「V3」および「V3.1」が中国国産チップと互換性があると発表したことだ。この進展は、中国がNVIDIAなどの海外サプライヤーへの依存を減らす上で重要な一歩となる。
英国の市場調査会社Omdiaのチーフアナリストを務めるSu Lian Jye氏は、「Cambriconは、DeepSeekが国産チップに向けて指定したソフトウェアフォーマットであるFP8スケールをサポートする製品を手掛ける数少ない中国の半導体企業の1つだ」と強調した。
Cinda Securities(信達証券)のMo Wenyu氏らアナリストは、これは「ソフトウェアとハードウェアのコラボレーション」の局面を示していて「海外のコンピューティングパワーへの依存を大幅に減らす」ことにつながると見ている。
米国規制の対象も、4348%増の売り上げ成長
より広範な背景としては、米国による先端半導体の輸出規制の強化があり、中国企業は国産半導体の開発を加速させている。2016年にChen Yunji 氏と Chen Tianshi氏兄弟が設立したCambriconは、2022年12月に米国の貿易ブラックリストに追加され、米国の中核技術およびファウンドリーサービスへのアクセスを制限されている。
こうした課題にもかかわらず、Cambriconは、2025年上半期の売上高が前年同期比4348%増となる28億8000万元(4億380万米ドル)という記録的な伸びを示し、前年度の純損失を10億4000万元の利益に転換したと報告した。
Cambriconは、この成長は「継続的な市場拡大とAIアプリケーションの実装に対する積極的なサポート」によるものだと説明。また、AIトレーニングと推論に使用されるチップのハードウェア/ソフトウェア開発の両面で進展を遂げ、DeepSeekやAlibaba Group(以下、Alibaba)のQwen、Tencent HoldingsのHunyuanを含む主要な中国AIモデルへの対応を拡大していると主張している。
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