「中国の小さなNVIDIA」、Cambriconの躍進が示す中国の野心:株価は中国市場で最高額に(2/2 ページ)
中国の北京に本拠を置く半導体メーカーであるCambricon Technologiesは、中国本土の株式市場において最も価値の高い銘柄へと躍進を遂げた。「中国の小さなNVIDIA」と称される同社のような企業の台頭は、既存プレイヤーに挑戦しAIチップ製造の未来を再構築しようとする中国の野心を浮き彫りにしている。
CUDAプラットフォームと互換性? Alibabaも新AIチップ開発
一方、中国最大のクラウドコンピューティング企業であるAlibabaは、NVIDIAの中国における規制障壁によって生じた空白を埋めるべく、新たなAIチップを開発した。The Wall Street Journalによると、同チップは従来品よりも汎用性が高く、最先端チップを必要としない幅広いAI推論タスクに対応することを目的としているという。
Alibabaは公式発表を行っていないが、米国EE Timesの情報筋によると、同社のチップコアはRISC-Vアーキテクチャを採用している。これはAlibabaが長年投資を続けてきたオープンソースプラットフォームであり、中国で広く支持されている。
重要なのは、AlibabaのチップはNVIDIAのCUDAプラットフォームとの互換性を持つ可能性があるという点だ。これによってエンジニアは既存プログラムを流用できる。これは、高性能であるにもかかわらずNVIDIAエコシステムとシームレスに統合できないHuaweiのAscendチップとは対照的だ。
Cambriconや上海のMetaXといった中国企業が著しい進歩を遂げているにもかかわらず、業界関係者は、特にAIモデルのトレーニングという要求の厳しい作業において、中国が最先端の米国製品に匹敵するチップを生産するにはまだ程遠いと指摘している。
中国の工場は、米国による最先端チップ製造技術の制限に直面していて、MetaXなどの一部企業は、性能低下を補うため、旧世代技術を採用し小型チップを組み合わせる対応を取っている。
中国政府は、2025年1月に発表した84億米ドルのAI投資基金を含む、自給自足型AIサプライチェーンへの積極的な投資を進めている。
とはいえ、中国が国内の有力企業育成と外国技術への依存低減を断固として推進する中、世界のAI半導体市場は市場原理と地政学的要請の両方に駆り立てられ、変革期を迎えている。
Cambriconのような企業の台頭は、既存プレイヤーに挑戦しAIチップ製造の未来を再構築しようとする中国の野心を浮き彫りにしている。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
NVIDIAとAMDが米政府に中国売上高の15%を支払い、影響は
NVIDIAとAMDは「中国から得た売上高の15%を米国政府に支払う」という異例の契約に合意したとされるが、米国政府はそれに伴って、対中輸出規制の緩和にも合意しているとみられる。この契約は「厄介な前例」となり、今後の貿易戦争をさらに激化させる可能性がある。米国政府がIntel株を10%取得 元王者の救済は「国有化への序章」か?
米国政府は2025年8月22日(米国時間)、「アメリカファースト」製造業構想の一環として、Intelへの直接投資を実施すると発表した。業界内ではこれに対して「Intelの国有化に等しい」という批判も上がっている。「NVIDIAと真逆の取り組みをしよう」 Jim Keller氏
AIワークロード向けのプロセッサ「Blackhole」の出荷を開始したTenstorrent。同社のCEOを務めるJim Keller氏は「この4年間で最も素晴らしい日になった」と語る。3年かけてついに完成した「CUDA」の代替はAI開発を変えるのか
「CUDA」の代替となるプラットフォーム開発を目指している新興企業のModularが、ついにその技術を完成させたという。NVIDIAの牙城を崩すのか。FPGAはAIデータセンターの新たな選択肢になるのか
データセンターAIシステムのスタートアップPositronは、FPGAベースのソリューションで、NVIDIAのGPUに対抗しようとしている。同社の技術と戦略について聞いた。半導体業界にDeepSeekショック、Pat Gelsinger氏は「市場の反応は間違いだ」
話題沸騰の「DeepSeek」、元Intel CEOのPat Gelsinger氏が見解を示しています。