Metaの新ARグラス登場でディスプレイ技術競争が激化へ、TrendForce:LCoSのシェアが拡大
台湾の市場調査会社TrendForceは、Metaが発表したAIスマートグラス「Meta Ray-Ban Display」によって、2026年までに拡張現実(AR)ディスプレイ市場におけるLCoS(Liquid Crystal On Silicon)ディスプレイ技術のシェアが13%に拡大すると予測している。
台湾の市場調査会社TrendForceは2025年9月19日(台湾時間)、Metaが発表したAIスマートグラス「Meta Ray-Ban Display」によって、2026年までに拡張現実(AR)ディスプレイ市場におけるLCoS(Liquid Crystal On Silicon)ディスプレイ技術のシェアが13%に拡大するという予測を発表した。
一方で単一パネルフルカラーLEDoS(LED on Silicon)は「技術面とコスト面で大きなブレークスルー達成は2028年まで見込まれていない」と説明。それまで、両技術の競争が激化する見込みだという。
ARデバイス出荷量は2025年に60万台に
TrendForceは、「2025年ニアアイディスプレイ市場動向/技術分析レポート」においてAI機能の搭載が情報表示型ARアプリケーションの成長をけん引していると指摘。2025年の世界ARデバイス出荷台数は前年比9.1%増の60万台に達すると予測している。
Metaは2025年9月17日(米国時間)、AI機能搭載のスマートグラスMeta Ray-Ban Displayを発表。TrendForceは、単眼ニアアイディスプレイ(視野角20度)を採用するこのスマートグラスについて「20〜35度の視野角範囲はAI支援型情報需要の要件を満たす。解像度600×600、画素密度42PPD(Pixel Per Degree)、輝度5000ニットという仕様は、情報ディスプレイ市場を正確に狙った設計だ」と分析している。
TrendForceによると、Meta Ray-Ban Displayでは、主流の単色グリーンLEDoSと導波路の方式ではなく、OmniVisionのフルカラーLCoSディスプレイとLumusの幾何学導波路ソリューションを組み合わせた方式を採用しているという。TrendForceは「これは技術的成熟度、単一パネルでのフルカラー対応、コスト管理、平均消費電力の低さといったLCoSの優位性を反映していて、Metaにとってより魅力的な選択肢となった」とコメント。この方式の採用がLCoSベースの生産における市場シェア拡大につながるとともに、同技術の認知度向上や他ブランドの資源投入を促す可能性もあると分析している。
ただ、TrendForceはLCoSが光学エンジンの小型化、高輝度、高コントラスト化において依然課題を抱えているとも指摘。ここではOmniVisionやHimax Display、Avegantらサプライヤーは次世代の研究開発および製品改良を進めている。
TrendForceは単一パネルフルカラーLEDoSについては、コストと製造プロセスの両面で大幅な改善が依然として必要だと説明。そのうえで「量子ドット(QD)による色変換、垂直積層、または窒化インジウムガリウム(InGaN)技術によるブレークスルーが実現すれば、2028年以降にフルカラーLEDoS製品の製品市場適合性(PMF)が向上し、2030年までに市場シェアを65%まで押し上げるだろう。それまでは、LCoSとLEDoSの競争が激化すると見込まれる」と見通しを示している。
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