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「エッジで生成AI」が当たり前の時代に カスタムAIで導入を後押しアラヤ Chief Engineering Officer 蓮井樹生氏(1/2 ページ)

エッジAIの導入が加速している。企業のエッジAI導入を支援するアラヤのChief Engineering Officerである蓮井樹生氏は、「エッジデバイスで生成AIが動かせる時代が来る」と語る。製造業へのエッジAI導入のトレンドや今後の課題について聞いた。

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 組み込み機器上でAI推論を行う「エッジAI」の導入が進んでいる。クラウドAIに比べてコストや消費電力が小さいこと、セキュリティやリアルタイム性を高められることが利点で、自動車や民生機器への搭載に加えて、製造プロセスの効率化に向けた活用も盛んだ。

 AIや脳科学に関連したソリューションを展開するアラヤは、企業のエッジAI導入を支援している。製造業へのエッジAI導入のトレンドや今後の課題について、アラヤ Chief Engineering Officerの蓮井樹生氏に聞いた。

アラヤ Chief Engineering Officerの蓮井樹生氏
アラヤ Chief Engineering Officerの蓮井樹生氏[クリックで拡大]

AI専門チームを設置する企業が増加

――アラヤの事業内容について教えてください。

蓮井樹生氏(以下、蓮井氏) アラヤは、認知神経科学の研究者である金井良太(アラヤ CEO)が2013年に設立したスタートアップで、AIとニューロテック(脳科学に関連するテクノロジー)に関する事業に注力している。AI領域では、もともと画像認識AIのアルゴリズムを手掛けていて、それをエッジデバイスに実装するという流れでエッジAI関連事業を始めた。2018年ごろから、エッジAIの導入支援を行っている。

アラヤのAI関連技術
アラヤのAI関連技術[クリックで拡大] 出所:アラヤ

――エッジAI導入支援とはどのようなことを行っているのですか。

蓮井氏 AIモデル開発から、エッジデバイス選定、モデルの最適化や実装、評価までを支援している。製造プロセスやインフラ点検のデジタルトランスフォーメーション(DX)の一環としてのAI導入もあれば、民生機器や産業機器などの製品へのAI搭載を支援することもある。

アラヤのエッジAI導入支援プロセス
アラヤのエッジAI導入支援プロセス[クリックで拡大] 出所:アラヤ

蓮井氏 インフラ点検での事例は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクトで行った通信鉄塔点検だ。ドローンで鉄塔を撮影してデータをAIで解析するというもので、従来はクラウドに全てのデータを送信していた。このドローンにエッジAIを導入し、異常をその場で判断して必要なデータのみクラウドに送信するようにした。これによって、通信コストやデータ管理の手間を大きく削減できた。工場への導入は、製品の画像検査や装置の異音検知、防犯カメラと組み合わせた従業員の安全モニタリングなどがある。最終製品へのAI搭載支援は、自動車への搭載や、電化製品の高機能化の相談が多い。

インフラ点検でのエッジAI導入事例
インフラ点検でのエッジAI導入事例[クリックで拡大] 出所:アラヤ

――2022年の「ChatGPT」の登場などでAIは一大ブームになりましたが、相談件数や内容の変化はいかがですか。

蓮井氏 相談件数は大きく増えている。エッジAI導入支援を始めた2018年は世の中が「AIって何?」という状況で、エッジAIの導入を進める企業はごく一部だったが、現在はかなり取り組みが進んでいる。大企業では自社内で専門チームを作ってAIモデル開発を進めていることも多い。大きい予算がない企業も、クラウドではなくエッジの規模ならやってみたいという声がある。

 内容の変化としては、「エッジで生成AIを動作させたい」という要望が増えている。検索拡張生成(RAG)で社内の独自データなどを与えたり、大規模言語モデル(LLM)より軽量な小規模言語モデル(SLM)を活用したりすることで、エッジ環境でも独自データの検索/回答生成システムが構築可能だ。装置の操作マニュアルのように使ったり、法規制を即座に確認したりできる。

エッジデバイス上で生成AIを動作させるイメージ
エッジデバイス上で生成AIを動作させるイメージ[クリックで拡大] 出所:アラヤ

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