赤信号灯るIntel、5年後はどうなっているのか:湯之上隆のナノフォーカス(84)(1/4 ページ)
Intelが極度の経営難に陥っている。AI半導体ではNVIDIAに全く追い付けず、x86 CPUでもAMDを相手に苦戦を強いられている。前CEO肝入りだったファウンドリー事業も先行きは暗い。Intelは今後どうなっていくのだろうか。
極度の経営難に陥っている米Intel
Oregon Tech(オレゴン工科大学)のニュースサイトに2025年7月9日、“Intel’s CEO: ‘We are not in the top 10’ of leading chip companies”が掲載された。このニュースによれば、2025年3月12日に米IntelのCEOとなったLip-Bu Tan氏は、Intelの社内放送で従業員に対して、以下のように伝えたという(順番は筆者が入替えた)
- 「20年、30年前は、われわれは真のリーダーだった。しかし今では世界は変わり、われわれは半導体企業トップ10にも入っていない」
- 「NVIDIAのGPUが席巻しているAI半導体については、われわれはもはや手遅れだ」
- 「これまでのクラウド中心のAIから方針を転換して、AI PC等のエッジAIに注力する」
- 「(Foundryビジネスについて)白紙の小切手はない」
- 「Intelの立て直しとリストラは、“マラソン”になる」
かつて半導体業界の盟主だったIntelのCEOの発言としては、あまりにも衝撃的である。そこで、以下では、これらの発言を基に、Intelの現状を明らかにする。その上で、Intelの将来展望を考察する。かなり不吉な考えが頭をよぎるが、最悪の場合は、「もしかしたら、5年後に、Intelという半導体メーカーは存在しないかもしれない」ということである。
「われわれは半導体企業トップ10にも入っていない」
「われわれは半導体企業トップ10にも入っていない」――。この発言は、一体何を意味するのか。
図1に示した主な半導体メーカーの四半期の売上高を見てみると、Intelは2021年頃まではSamsung Electronicsと1位を争っていたが、その後はSamsung、TSMC、Broadcom、SK hynixに抜かれた。2025年6月期および7月期では、1位NVIDIA(467億米ドル)、2位TSMC(300.7億米ドル)、3位Samsung(156億米ドル)、4位SK hynix(155億米ドル)、5位Broadcom(150億米ドル)、6位Intel(119億米ドル)となっている。このようにIntelはトップの座から滑り落ちたが、売上高では一応トップ10に入っている。
従って、Tan CEOの「われわれは半導体企業トップ10にも入っていない」という発言は、売上高のランキングを指しているわけではないと考えられる。
そこで今度は、2025年7月末時点の半導体関連企業の株式時価総額ランキングを調べてみた(図2)。その結果は、1位NVIDIA(4兆2000億米ドル)、2位Broadcom(1兆3300億米ドル)、3位TSMC(1兆2500億米ドル)、4位Samsung(3160億米ドル)となっていて、5位以下は時価総額が大きく下がり、いわば“どんぐりの背比べ”の状況であった。
その“どんぐり”をよく見ると、Intelの株式時価総額は101億米ドルで17位にとどまっていた。確かにトップ10には入っていない。しかもIntelは、5位ASML、10位Applied Materials、12位Lam Research、14位KLAなどの半導体製造装置メーカーよりも下位に位置しているのである。
このことから、Tan CEOが「われわれは半導体企業トップ10にも入っていない」と述べた背景がようやく理解できた。かつて半導体売上高で長らく世界1位に君臨し、2000年代には株式時価総額でも1位に立ったことのあるIntelにとって、これはまさに屈辱的な状況であり、同社の凋落(ちょうらく)を象徴する出来事であろう。
では、株式時価総額を大きく棄損することになったIntelの営業成績はどうなっているのか。
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