赤信号灯るIntel、5年後はどうなっているのか:湯之上隆のナノフォーカス(84)(2/4 ページ)
Intelが極度の経営難に陥っている。AI半導体ではNVIDIAに全く追い付けず、x86 CPUでもAMDを相手に苦戦を強いられている。前CEO肝入りだったファウンドリー事業も先行きは暗い。Intelは今後どうなっていくのだろうか。
大赤字に転落したIntel
図3に、Intelの売上高、最終損益、社員数の推移を示す。ひと目で、ここ数年間の業績が、「うわ、ひどいな!」と驚かされるほど悪化していることが分かる。
まず、売上高は2021年の790億米ドルをピークに急落し、2024年には約3分の2となる571億米ドルまで減少した。次に、最終損益は2021年の198.7億米ドルから2022年には約60%減の80.1億米ドルへ、さらに2023年には80%減の16.9億米ドルに落ち込み、2024年にはついにマイナス187.5億米ドルという巨額赤字に転落した。
この最終損益の赤字拡大の主要因の一つがFoundryビジネスの不振である。実際、2024年第2四半期から2025年第2四半期まで、同部門は一貫して赤字を計上している(図4)
しかし、Intelの不調はFoundry事業にとどまらない。同社の屋台骨であるデータセンター向け半導体や各種CPUなどが競争力を失い始めているからである。
特に、NVIDIAのGPUが席巻しているAI半導体については、Intelはひどい劣勢を強いられている。これについて詳しく見てみよう。
「AI半導体については、われわれはもはや手遅れだ」
図5に、データセンター向け半導体の売上高推移を示す。このカテゴリーの半導体にはCPUとGPUが含まれている。この図から分かるように、2021年から2022年にかけてはIntelが売上高でトップに立っていた。
しかし、2022年11月30日にOpenAIがChatGPTを公開して以降、NVIDIAの売上高が爆発的に拡大し、あっという間にIntelを抜き去った。その理由は明白である。ChatGPTをはじめとする生成AIがデータセンターのAIサーバ上で稼働しており、そこで使用されるAI半導体としてNVIDIAのGPUが引っ張りだこになったからである。
この結果、NVIDIAのGPUが世界市場を席巻した一方で、Intelの売上高はジリ貧状態となり、ついにはAI半導体でNVIDIAを追撃しようとしているAMDにも追い抜かれつつある。
さらに、2023〜2025年のAI半導体出荷個数をみると、その格差はより鮮明である。2025年にNVIDIAは302.5万個を出荷する見通しであるのに対し、Intelはわずか5%にあたる15.6万個にとどまっており、この数字はAMDの31万個の約半分にすぎない(図6)

図6:2022〜2024年における学習用AI半導体の出荷個数[クリックで拡大] 出所:Ken Kuo(TrendForce)、「全世界メモリ市場分析から来年AI未来の予測」(TrendForce産業フォーカス情報、2023年12月14日)のデータを基に筆者作成
このように、Intelはデータセンター向け半導体市場においても、AI半導体市場においても、NVIDIAに大差をつけられており、こうした状況がTan CEOの「われわれはもはや手遅れだ」という発言の背景にあると考えられる。
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