検索
特集

AMD、OpenAIに6GW規模のGPU提供へ 「NVIDIA一強」を崩せるか「AMDの大きな勝利」とアナリスト(1/2 ページ)

AMDとOpenAIが戦略的提携を締結した。この提携は、AMDに今後5年間で1000億米ドル以上の収益をもたらすと予想される。さらに、OpenAIはAMDの株式の10%を取得する権利を得る。これによってAMDがNVIDIAからGPU市場のシェアを奪える可能性がある。

Share
Tweet
LINE
Hatena

 AI分野で幅広く活動するOpenAIは、GPUサプライヤーであるAMDと戦略的提携を締結した。この提携は、AMDに今後5年間で1000億米ドル以上の収益をもたらすと予想される。さらに、OpenAIはAMDの株式の10%を取得する権利を得る。

 OpenAIは、6GW規模のAMD GPUの購入を約束していて、2026年後半に1GW相当の「Instinct MI450」GPUの供給が開始されるという。OpenAIはAMDから直接またはクラウドパートナーを通じて6GWのAMD GPUを購入する。

 AMDは「ハードウェアとソフトウェアの改良によって、MI450シリーズは『Rubin CPX』などのNVIDIAの同等製品を上回る性能を発揮する」と主張している。SemiAnalysisのアナリストであるJordan Nano氏は、「『Instinct MI355X』などのAMD GPUは、適切な価格と適切なワークロードであれば、コスト当たりの性能では『NVIDIA B200』を上回る」と述べている。

 AMDとOpenAIの提携は、2023年の「Instinct MI300X」の供給から始まり、「Instinct MI350X」シリーズに引き継がれている。MI450は、AMDにとってAI機能を搭載した6番目のデータセンターGPUであり、現在出荷中かつ主要なネオクラウドでレンタル可能なMI300X、「Instinct MI325X」、MI355Xに続く4番目の「本格的な」AI GPUとなる。

AMDの最先端AIチップ「Instinct MI450」は、2026年後半から出荷予定だ
AMDの最先端AIチップ「Instinct MI450」は、2026年後半から出荷予定だ[クリックで拡大] 出所:AMD

 実際に、OpenAIは2025年6月に開催されたAMDのイベント「Advancing AI」に登壇して、AMD GPUの活用について語っている。この時、AMDのチェアマン兼CEOのLisa Su氏は、OpenAIをAMDのMI450 GPUの「非常に初期の設計パートナー」と呼んでいた。

AMDはAI大手から注目される存在に

 AMDとOpenAIの協定は、創造的な資金調達の妙とも言えるものだ。Su氏はこれを「非常に革新的だ」と評し、「簡単に実現したわけではない」と付け加えた。

 複数年、複数世代にわたるこのパートナーシップにおいて、OpenAIがGPU導入のマイルストーンを達成することを条件に、AMDはOpenAIに対して最大1億6000万株を行使価格0.01米ドルで段階的に取得できる新株引受権(ワラント)を発行する。これはAMDの株式の約10%に相当する。同契約には、この画期的なパートナーシップによりAMDの株価が上昇した場合にのみ、この取り決めが行使されることも明記されている。

 業界観測筋は、これをAMDにとっての画期的な進歩と評している。これによってAMDは大手AI企業の戦略的サプライヤーとなり、より多くのAI企業から注目される存在になると考えられる。一方、OpenAIは次世代AIシステムの構築に十分なデータセンター容量を確保できる。OpenAIの共同創設者でCEOを務めるSam Altman氏は「十分なコンピューティング能力を確保することは、言葉では表せないほど困難になっている」と述べている。

今回の提携には、複数世代のInstinct GPUが含まれる
今回の提携には、複数世代のInstinct GPUが含まれる[クリックで拡大] 出所:AMD

 米国のコンサルティング会社であるJ. Gold Associatesのプレジデント兼主席アナリストを務めるJack Gold氏は「これはAMDにとって大きな勝利であり、先進的なGPUでAIの大波にうまく乗るための適切な戦略を実践してきたことを示している。また、OpenAIがデータセンターの拡張を続ける中で、プロセッササプライヤーの多様化の必要性を認識していることの表れでもある」と述べている。

 特に、最先端のNVIDIA GPUの需要が供給を上回っている現在の状況ではなおさらだ。Gold氏は「このコミットメントと投資によってAMDチップの供給を確保し、OpenAIは大規模な拡張計画を継続することができる」と付け加えた。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

       | 次のページへ
ページトップに戻る