中小FPGAに注力する「ぶれない」Lattice 日本市場にも期待:「日本はFPGAの革新が生まれる場所」(1/2 ページ)
ハイエンド領域で争うAMD(旧Xilinx)やAlteraとは一線を画し、中小規模のFPGAに力を入れてきたLattice Semiconductor。同社によれば、FPGAの活用領域は広がっているという。AIのような日進月歩のアプリケーションでは、FPGAの柔軟性が生きるからだ。
小規模およびミッドレンジのFPGAを手掛けるLattice Semiconductor(以下、Lattice)が、製品展開を強化している。同社によれば現在、FPGAの活用領域が広がっていると述べる。同社の戦略をプレジデント&CEOのFord Tamer氏、マーケティング&ビジネス ディベロップメント シニアバイスプレジデントのEsam Elashmawi氏、日本法人ラティスセミコンダクター 代表取締役社長の三矢高広氏に聞いた。
「FPGAの利点」生きる状況に
――FPGAの市況についてお聞かせください。FPGAのユーザー数は、増えているのでしょうか。
Ford Tamer氏 ASICのコストは増加していて、マイコンは消費電力やレイテンシなどの課題がある。さらに、システム設計ではデザインサイクルが非常に短くなっていて、2年から18カ月あるいは12カ月に短縮しつつある。つまり、FPGAの利点が生きる状況になっているのではないか。
現在の当社のFPGAユーザー数は約1万1000社だ。1年前は約1万社だったので、1年で1000社ほど増加している。
――AlteraがIntelから独立するなどの動きがありました。FPGA業界の現状をどう見ていますか。
Tamer氏 AlteraがIntelから独立しても、われわれの戦略には特に影響はない。当社の戦略はあくまでも、顧客の成功に貢献することだ。特に、市場投入までの期間(Time to Market)、売り上げにつながるまでの期間(Time to Revenue)、安定した品質での量産という観点でのコミットメントを目指している。
AIの急速な進化にも対応しやすい
――Latticeの現在の戦略と強みを教えてください。
Tamer氏 われわれは、小規模FPGAとミッドレンジFPGAにフォーカスして製品を展開してきた。システムロジックセル数でいえば、小規模FPGAプラットフォームの「Nexus」は最大220k、ミッドレンジプラットフォームである「Avant」は300k〜600kほどだ。低消費電力、小型、コストパフォーマンスを追求したプラットフォームを市場に投入していくことが、Latticeの基本戦略になる。
Esam Elashmawi氏 FPGAは、業界に変化が起こっているときに真価を発揮することが多い。例えば、現在はAIが急速に進化している。AIモデルは日進月歩で進化しているが、FPGAであればそうしたスピーディな変化に対応しやすい。
セキュリティ技術も、FPGAの特徴を生かせるアプリケーションの一つだろう。セキュリティ対策はサイバー攻撃との“いたちごっこ”になりやすいが、われわれのFPGAは次世代でもセキュリティを確保できるようなブロックを搭載している。量子コンピュータが関わってくるようなセキュリティが実現されたとしても、対応できるようになっている。
もう一つの例としてディスプレイも挙げられる。ディスプレイの搭載が民生機器や産業機器、自動車まで広がると、それぞれ異なるディスプレイサイズや解像度が求められる。FPGAは、そうした異なる仕様のディスプレイ駆動や、LEDディミングなどにもすぐに対応できる。
FPGA市場において、中小規模のFPGAはメインストリームでユーザー数も多い。何十万という顧客がいる。膨大なロジックセル数を持つハイエンドFPGAは、非常に高性能だが顧客数は少ない。多数のユーザーが存在する市場をターゲットにしていることは、Latticeの変わらぬ戦略でもあり、強みでもある。
センサーの隣で前処理を担う「ファーエッジAI」
――AIという言葉が出ましたが、メガトレンドの一つであるエッジAIについて、何か計画はありますか。
Tamer氏 Latticeは、エッジAIの中でも、センサーに隣接する位置に(FPGAを)置く「ファーエッジAI(far edge AI)」に焦点を当てている。例えば画像認識において、イメージセンサーからのデータをGPUに取り込む前に、FPGAである程度前処理を行う。これがファーエッジAIだ。演算処理能力でいえば1TOPS以下の領域になる。NVIDIAやQualcommなどは、われわれのパートナーになるという位置付けだ。NVIDIAとは、センサーからGPUまで、データをシームレスに送信する技術「NVIDIA Holoscan Sensor Bridge」を活用したエッジAI用リファレンスボードを開発するといった形で協業している。
――2024年9月にCEOに就任されましたが、Latticeの強みと課題をあらためてお聞かせください。
Tamer氏 Latticeには、エンジニアリング、マーケティング、オペレーションのいずれにおいても非常に強いチームが存在する。顧客も、通信から自動車、産業機器、医療機器など多岐にわたり、パートナーとの連携も強い。
課題はサプライチェーンだ。地政学リスクの影響を受けにくい場所に拠点を設け、サプライチェーンを確保することが重要だと考えている。特に産業分野では数十年にわたる長期的なサポートが必要だ。厳しい要求を持つ顧客も多いので、それに応えていく必要がある。
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