「スマホ大の12kW電力供給ボード」を目指す STの次世代AI DC向け技術:NVIDIAの800V直流電源アーキテクチャに対応
STMicroelectronicsは、次世代AIデータセンター向け電源供給システムの試作品を発表した。NVIDIAが開発する800V直流電源アーキテクチャをサポートする新しい設計だ。
STMicroelectronics(以下、ST)は2025年10月、次世代AIデータセンター向け電源供給システムの試作品を発表した。NVIDIAの直流電源アーキテクチャをサポートする新しい設計だ。
GaNベースのLLCコンバーターを開発中
現在、AIの急速な普及によりデータセンターの電力需要がかつてないほどに大きくなっている。従来の54V電力供給システムはキロワット級のサーバラック向けに設計されたもので、新たに登場したメガワット級のサーバラックの要件を満たすことが難しい。そのため、NVIDIAは現在800V直流電源アーキテクチャの開発に取り組んでいる。このアーキテクチャは、メガワット級サーバラックに対応するとともに、高効率化や銅ハーネスの使用量削減、インフラ構成の簡略化にも貢献するものだ。
こうした潮流を踏まえ、STは、シリコン(Si)や炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)の技術と、チップおよびパッケージレベルでのカスタム設計を組み合わせた製品ポートフォリオを活用し、800V直流電源アーキテクチャに対応した電源ソリューションの開発を進めている。
2025年9月に米国カリフォルニア州サンノゼで開催されたAIデータセンター向け技術イベント「OCP Global Summit 2025」で、STはスマートフォンとほぼ同サイズの小型12kW電力供給ボードを開発すると発表した。同ソリューションは入力電圧800V、スイッチング周波数1MHzで動作するGaNベースのLLCコンバーターだ。STは最大出力試験を完了し、12kWの連続出力、98%以上の効率を確認したという。
STは同ソリューションについて「電力密度や効率、熱管理、信頼性といった基本的な課題の解決に対応するもので、メガワット級のAIサーバラックの導入を実現するとともに、インフラを簡略化し、総所有コストを削減する。これは次世代のハイパースケールAIデータセンターに向けた大きな一歩だ」としている。
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