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SiTimeはルネサスのタイミング事業を手に入れるのかMEMS発振器で独走(1/2 ページ)

ルネサス エレクトロニクスがタイミングソリューションを売却するとの報道が出ている。同事業はルネサスが2018年にIDTの買収によって受け継いだものだ。

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 報道によると、半導体タイミングソリューションを専業とするSiTimeは、ルネサス エレクトロニクス(以下、ルネサス)のタイミングコンポーネント部門を買収する方向で交渉を進めているという。もしこの取引が実現すれば、SiTimeにとっては過去最大規模の買収となる見込みだ。

 Reutersは2025年10月初めに、ルネサスが同社のタイミング部門を20億米ドル相当で売却する可能性があると報じていた。また、そのタイミング事業の売却先候補として、Texas InstrumentsとInfineon Technologiesの名前が挙がっていたという。同事業は主に、ルネサスが2018年に買収したIntegrated Device Technology(IDT)から受け継いだものだ。

 上述のように、ルネサスのタイミングポートフォリオには、クロックやジッタ、同期ソリューションなどがあり、そのほとんどがIDTの買収によって入手したものだ。その中には、マルチ出力PLL(位相同期ループ)向けのクロックジェネレーター/シンセサイザーや、ファンアウトバッファ、ジッタクリーナー/減衰器、MEMS/水晶発振器、マルチプレクサー/スイッチ、リアルタイムクロックなどが含まれる。


ルネサスは2018年、IDTの買収によってタイミングソリューションを補完した 出所:ルネサス エレクトロニクス

 これらのデバイスは、高速システムを同期してノイズフリーの状態を維持し、データセンターや5G基地局、AIアクセラレーター、FPGAボードなどでタイミング規律を実行する。タイミングデバイスは、現場で実証済みの設計ツールと連携し、顧客との関係性も確立されている。

 その一方でSiTimeは、従来の水晶技術を置き換えるMEMSベースのタイミング製品として、発振器や共振器、クロックジェネレーターなどを提供している。これらの発振器や共振器、クロックジェネレーターは、より高精度な同期を支援するソフトウェアスイートで補完されている。

SiTimeが2025年10月に発表したMEMS振動子「Titan Platform」の外観 出所:SiTime
SiTimeが2025年10月に発表したMEMS振動子「Titan Platform」の外観 出所:SiTime

 ルネサスは過去10年の間、半導体業界で連続的に買収を行う企業として認識されてきた。2024年には、PCB設計ツールメーカーであるAltiumを59億米ドルで買収し、設計ソフトウェアワークフロー分野への進出を目指した。しかし今では、バランスシートの健全化を進めたり、戦略の明確化に注力するなど、尻すぼみな状態になっている。

 そのためには必然的に、非中核資産を手放し、自動車や産業、組み込み設計などに向けたマイコンやパワー半導体、ドメインコントローラーSoC(System on Chip)といった、注力分野向けに資本を調達することになる。またルネサスの事業売却は、企業が戦略的に重要な分野を強化するために自社のポートフォリオを定期的に見直すという、半導体業界では一般的とされる傾向を反映している。

 ルネサスは、隣接した資本集約型のセグメントを入れ替えることで、同社にとって戦略的に重要な分野とより強固に連携させようとしている。つまり、ルネサスにとって、“集中”が“拡大”に取って代わるのだ。半導体事業の統合という魅力的な世界では、決して退屈している暇はない。

 SiTimeのCEOであるRajesh Vashist氏は最近、同社が110億米ドルのタイミングコンポーネント市場の中で、30億米ドル相当の分野に注力していることを認めている。SiTimeは、ルネサスのハイエンドなタイミングスタック事業を買収することで、自社のタイミング製品の幅を広げ、同市場におけるシェアを拡大できるようになるだろう。

 Vashist氏はしばしば「われわれにとって、タイミングデバイスが全てだ」と述べている。

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