Tenstorrentがレイオフ実施、開発者向け販売に軸足:従業員の7.5%を削減
Tenstorrentはレイオフを実施し、従業員を約1000人に減らした。「特定の部署の人員を削減したものではない」ものの、少なくとも法人営業の規模は縮小し、開発者個人や中小企業への営業を強化するという。
AIチップのスタートアップであるTenstorrentはレイオフを実施し、従業員の7.5%を削減して、約1000人に減らした。同社の特定の部署が縮小しているわけではないが、TenstorrentのCEOであるJim Keller氏は米国EE Timesに下記のように語った。
「われわれは非常に急速に成長した。その中で、誰もがうまくいくわけではない。当社は財務的な理由で人員を削減しているわけではなく、ある部分ではスキルとマインドセット、別の部分ではチームの適合性などが背景にある。健全な組織は、毎年6〜10%の従業員を自発的または非自発的に失っている」(Keller氏)
業務面での変化としては、プログラミングでAIの利用が増加していることが挙げられる。Keller氏によると、AIの導入は一部のチームメンバーでは成功しているが、他のチームメンバーではあまり成功していないという。
Tenstorrentはまた、営業戦略を法人向け営業から個人開発者向けに転換し、法人向け営業チームの規模を縮小した。「長期的に見れば、大手企業が最も多くの利益を上げることになるが、それはわれわれが目指しているものではない」とKeller氏は述べる。同社は法人向け営業を行っているが、開発者と直接仕事をすることで、より多くのことを学べると付け加えた。
Jim Keller氏(左)とInfinia Technologies CEOのArif Khan氏。両社は2025年12月9日(米国時間)、Infinia TechnologiesにTenstorrentのチップを供給する契約を発表した 出所:Tenstorrent
「法人営業の第1のルールは、小さな企業には決して販売しないことだ。時間の無駄になるからだ。だが、われわれは新しい製品、新しいテクノロジーを開発する企業であり、本当に素晴らしいアプリケーションの多くは開発者が直接的に生み出している。それ故、当社は開発者と中小企業に注力し、成長していくと全社に伝えている」(Keller氏)
例外はTenstorrentのIP(Intellectual Property)ビジネスで、こちらは自社の営業チームを通じて企業への販売を続けている。
第3世代プロセッサはチップレットベースに
ロードマップに関しては、Tenstorrentの第3世代の技術はチップレットベースになる。これらのチップレットはこの四半期(2025年10〜12月)にテープアウトする予定だったが、2026年第1四半期(2026年1〜3月)に後ろ倒しした。Keller氏によれば、2024年夏にBlue CheetahのダイツーダイPHY IPを買収したことと、それに関連してTenstorrentのOpen Chiplet Architecture仕様を公開したことが、後ろ倒しの主な要因だという。これらによって、設計を変更する必要があったからだ。
Keller氏によると、同社はソフトウェア開発で課題に直面してきたものの、着実にモデルを増やしている。現在は、Tenstorrentの第2世代プロセッサである「BlackHole」上で約70のモデルが動作しているという。サードパーティーがDeepSeekとGeminiのモデルを立ち上げることができ、そのパフォーマンスはTenstorrentの目標の半分程度だったが、両社は協力してバグの発見と修正に取り組んでいる。
「ことしの目標は、100のモデルが(BlackHole上で)動作し、Discord上で1000人の開発者を動かすことだ」とKeller氏は述べる。「われわれはそれを達成しつつある」
【翻訳、編集:EE Times Japan】
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