身近な材料と汎用プロセスで赤外センサー開発、茨城大:フィジカルAIでの3D形状計測も
茨城大学の研究グループは、安価で身近な材料と汎用の製造プロセスを用い、波長2.1μmまでの近赤外領域で明瞭な受光感度を示す「赤外イメージセンサー」の開発に成功した。自動運転車や非破壊検査装置などへの応用に期待する。
Mg2Si基板上に32画素フォトダイオードリニアアレイ構造を試作
茨城大学学術研究院応用理工学野の鵜殿治彦教授と木村孝之准教授らによる研究グループは2026年4月、安価で身近な材料と汎用の製造プロセスを用い、波長2.1μmまでの近赤外領域で明瞭な受光感度を示す「赤外イメージセンサー」の開発に成功したと発表した。自動運転車や非破壊検査装置などへの応用に期待する。
短波長赤外域(波長0.9〜2.5μm)に対応できる受光センサーは、低照度の夜間や煙霧状況における周囲観察、生体認証や非侵襲生体センシング、農作物や工業製品の非破壊検査、車載用LiDARセンシングなどへの応用が期待されている。フィジカルAIにおける3D形状計測なども期待できる応用分野の1つだ。ただ、製品化するには高価な化合物半導体基板を用いたり、高度な成膜技術を導入したりする必要がある。これらが広く普及させるための課題となっていた。
鵜殿教授の研究グループはこれまで、直径が50mm(2インチ)の高品質Mg2Si(マグネシウムシリサイド)単結晶基板の開発や、熱拡散プロセスを用いてpn接合フォトダイオードを形成することに成功してきた。特に、「融液成長法により常圧下で結晶成長させる」ことや、「安価な原料であるシリコンとマグネシウムを用いる」こと、「汎用の拡散プロセスでpn接合構造を製造する」ことで、低価格の赤外イメージセンサーを製造することが可能となった。
研究グループは今回、汎用のフォトリソグラフィー技術を用いた微細加工と熱拡散によって、Mg2Si基板上に画素サイズが50μm角で、画素ピッチ80μmの32画素フォトダイオードリニアアレイ構造のセンサーを試作した。このセンサーは波長1.2μmに感度ピークがあり、受光感度は波長2.1μmまで明瞭であった。
試作したアレイの各画素から得られる出力を、独自設計のトランスインピーダンスアンプ型シリコンI/V変換回路を用いて読み出した。画像の取得は、フィルムに描いたパターンを透過させた波長1.31μmの赤外光をセンサーに入射させ、センサー部を平行移動させることで32×32画素の画像を得た。
実験で得られた画像により、CZPチャートの一部や、「茨」の文字が鮮明に検出できることを確認した。
研究グループは今回の成果をベースに、フォトダイオード2次元アレイセンサーの開発および、多画素化や微細化の研究に取り組んでいるという。
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