高効率で高耐久の円偏光光源を開発、大阪大学ら:偏光変換効率の理論限界を突破
大阪大学の研究グループはアルバックと協力し、半極性面窒化インジウムガリウム(InGaN)量子井戸とストライプ型SiNxメタサーフェスを組み合わせることで効率を高めた「円偏光源」を開発した。3Dディスプレイや量子情報通信などへの応用に期待する。
半極性面InGaN量子井戸とメタサーフェスを組み合わせて実現
大阪大学大学院工学研究科の市川修平准教授と博士後期課程の村田雄生氏、小島一信教授らによる研究グループは2026年4月、アルバックの戸田晋太郎氏と協力し、半極性面窒化インジウムガリウム(InGaN)量子井戸量子井戸とストライプ型SiNxメタサーフェスを組み合わせることで効率を高めた「円偏光源」を開発したと発表した。3Dディスプレイや量子情報通信などへの応用に期待する。
円偏光は受光側の素子角度に特性が依存しないため、視野角が変化しやすいウェアラブル端末やマイクロLEDディスプレイなどの用途に適している。ところが、従来の円偏光LEDでは、「高い円偏光度」と「高い発光効率」を両立させることが難しく、デバイスとしての耐久性や量産性にも課題があったという。
研究グループは、照明用光源として普及しているInGaN LEDに着目した。ただ、極性面上に作製される一般的なInGaN LEDからの発光は無偏光である。ここから円偏光成分を抽出する時、従来方式だと変換効率50%が理論限界であった。
そこで今回は、有機金属気相成長法(MOVPE)により、結晶面の異なる半極性(20^21)InGaN/GaN量子井戸LED構造を作製した。そして、この光出射面にストライプ型SiNxメタサーフェスを直接形成した。メタサーフェスは光の偏光方向によって屈折率が変わる。これにより、直線偏光を円偏光に変換する「1/4波長板」としての機能が得られるという。
室温で光学測定を行った。この結果、右回り円偏光成分が観測され、円偏光度0.27を達成した。しかも、直線偏光から円偏光への変換効率は68%だった。3次元電磁界シミュレーション結果によって、半極性(20^21)InGaN量子井戸を利用した円偏光LEDにおいて、理想的な動作であることを確認した。さらに、ストライプ角度を90度回転させれば、同じ効率で左回り円偏光も容易に得られることが分かった。
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