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地政学が変えるメモリ調達戦略 「安く買う」だけでは危険成熟メモリこそ供給リスク大(1/3 ページ)

米中対立や輸出規制の強化によって、DRAMやNANDフラッシュメモリの調達を巡る前提が変わり始めている。HBMなど先端メモリは政策や地域の影響を強く受けるようになり、成熟メモリにも供給継続リスクが広がっている。サプライチェーンの地域化が進む中、機器メーカーには「最安調達」ではなく、継続供給やコンプライアンスを重視した戦略が求められている。

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 多くの電子機器メーカーは長年にわたって、お決まりのパターンでDRAMやNANDフラッシュメモリを調達してきた。熱心な交渉を行い、スポット市場の動向を注視し、市場はいずれ正常化すると想定して調達を進めるというやり方だ。だが、こうしたセオリーは崩れつつある。地政学的な分断、特に米中間の緊張とそれに伴う政策措置は、価格や入手可能性、品質認定のタイミング、さらには特定の顧客や最終用途に向けた「合法的な供給」の意味まで、あらゆるレベルでメモリサプライチェーンを再構築し始めている。

 新たなモデルは、グローバルに最適化された単一のネットワークというよりも、地域的なレジリエントシステムである。実際には、最先端のDRAMやHBMは政治的に足並みをそろえる地域に集まる一方で、成熟メモリはより広範囲に流通し続けている。その結果、市場は異なる論理で動く二つの市場へ分かれつつある。先進的な製品は政策の影響を受けやすくなり、戦略的に配分されるようになる。一方でレガシー製品は、サプライヤーが生産能力の配分を合理化する中で、先進製品とは異なる供給継続リスクに直面しているが、このリスクは過小評価されがちである。

輸出規制は一部でも影響は広範

 よくある誤解だが、輸出規制は単に特定の取引を阻止するだけだと思われがちだ。しかし、実際の影響はより広範で、ロードマップへのアクセス、パッケージングオプション、ツールの入手可能性、先進的な構成における顧客の認定プロセスにも影響が及ぶ。輸出規制が行われると、先進的なDRAMやHBM、AI関連メモリのユーザー企業は、導入が遅れるほか、性能の低い代替品を用いた再設計を余儀なくされることもある。なぜなら、サプライヤーは規制に準拠した用途や承認された顧客を優先するからだ。これによって、「最良の製品」は用途や管轄区域に関するコンプライアンス審査をクリアした顧客に確保される傾向が強まり、それ以外の全ての顧客には価格やリードタイムへの影響が及ぶようになる。

 さらに、グローバル市場にサービスを提供する企業は、サプライチェーンや製造拠点を地域化する必要がある。中国市場向けの製品には中国で製造された部品を、米国市場向けの製品には米国で製造された部品を採用する必要がある。こうした状況によって、サプライチェーン計画の複雑さが増している。

 さまざまな半導体法は半導体ファブの国内回帰を奨励しているが、これは自国のメモリの優位性を短期間で確立するというより、冗長性やエコシステムの発展、投資への信頼を促進するための仕組みとしての重要性が高い。メモリの観点から見ると、短期的にはパッケージングやテスト、産業用在庫の安定性、移行計画における改善が期待できるが、すぐにウエハーを自給自足できるといったものではない。

 商業的な意味合いは明白だ。欧州と米国ではバリューチェーンの周辺地域におけるレジリエンスが高まるかもしれないが、世界的なウエハー生産能力は当面は増強されないので、電子機器メーカーは依然としてアジアや米国のサプライヤーと規律ある長期的な関係を維持する必要がある。

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