室温で3μm帯まで検出できる赤外光センサー、名古屋大ら:家庭や医療など身近な製品に適用
名古屋大学とNECは、産業技術総合研究所(産総研)と共同で室温において波長1.55μ〜3μmの赤外光を検出できる小型センサーを開発した。ガス検知に加え、環境モニタリングやヘルスケア、食品/医薬品の品質管理など身近な領域での応用が期待される。
高い透過性と導電性を両立する電極と赤外光を吸収する材料を組み合わせ
名古屋大学とNECは2026年5月、産業技術総合研究所(産総研)と共同で、室温において波長1.55μ〜3μmの赤外光を検出できる小型センサーを開発したと発表した。ガス検知に加え、環境モニタリングやヘルスケア、食品/医薬品の品質管理など身近な領域での応用が期待される。
「中赤外」と呼ばれる波長3μm付近の光は、メタンガスや呼気に含まれる分子などを見分けられる。ところが、この領域を計測できるセンサーは大型かつ高価なものが多く、動作させるには冷却装置なども必要になっていた。そこで今回は、「室温で動作する」ことや、「一般的な半導体プロセスで製造できる」ことを目標として、3μm帯までの赤外光を検出できる小型センサーの開発に取り組んだ。
研究グループはこれを実現するため、大きく3つの技術を開発した。その1つは名古屋大学が開発した、高錫(Sn)組成ゲルマニウム錫(GeSn)を実現するための「MBE成長技術」だ。Snの低固溶度を抑えるため、低温MBEの成長条件を最適化し、Ge基板上に13.6%のSnを含むp型GeSn層の形成に成功した。これによって3μm帯の感度を持つ狭ギャップ半導体薄膜を実現した。
2つ目は、産総研とNECによる「高い透過性と導電性を両立させるiTCO薄膜電極の開発」である。In2O3にHとCeをドープし、固相結晶化条件を最適化したiTCOを採用した。これにより、受光層へ効率的に光を取り込むことが可能となった。
3つ目は、産総研とNECが行った「iTCO×GeSn×pn接合による室温3μm帯応答の実証」である。iTCO電極を統合したことで、1.55μm付近で1.09A/Wという高感度を達成。近赤外から中赤外までを1つの素子で扱うことができる「デュアルバンド検出」を実現した。これにより、赤外光の効率的な取り込みが可能となり、表面照射型のp型GeSn/n型Geフォトダイオードによる、室温3μm帯応答を初めて実証した。
今回の研究成果は、名古屋大学大学院工学研究科の中塚理教授、柴山茂久助教、NECの田中朋博士、産総研先端半導体研究センターの前田辰郎博士、Rahmat Hadi Saputro博士らによるものである。
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