SiCの理論限界に迫る低損失 AlN系SBDの動作実証に成功:東京大学とNTTが開発
東京大学とNTTは、損失が極めて小さい窒化アルミニウム(AlN)系ショットキーバリアダイオード(SBD)を開発し、動作実証に成功した。作製した素子は、AlN系デバイスの中で世界最小となるオン抵抗0.34mΩcm2および、逆方向耐圧400V(最大破壊電界8MV/cm)を達成した。この値はSiCやGaNの理論限界に迫るものだという。
AlN系デバイスの中で世界最小のオン抵抗を示す
東京大学大学院工学系研究科電気系工学専攻の佐々木一晴大学院生と前田拓也講師および、NTTは2026年5月、損失が極めて小さい窒化アルミニウム(AlN)系ショットキーバリアダイオード(SBD)を開発し、動作実証に成功したと発表した。作製した素子は、AlN系デバイスの中で世界最小となるオン抵抗0.34mΩcm2および、逆方向耐圧400V(最大破壊電界8MV/cm)を達成した。この値はSiCやGaNの理論限界に迫るものだという。
AlNは、バンドギャップエネルギーが6.0eVのウルトラワイドギャップ半導体であり、絶縁破壊電界が極めて大きい。このため、EV用モーターの駆動回路や電気の交流−直流変換回路、周波数変換回路などに用いれば損失を大幅に低減できる。両者はこれまで、AlN系SBDについて電流輸送機構の解明や、ショットキー界面物性の精密評価などを行ってきた。一方で、オン抵抗が大きくなるという課題もあった。
そこで両者は、組成傾斜AlGaNを膜厚700nmまで成長させ、パワーデバイスの耐圧維持層として用いることにした。デバイス設計は東京大学が行い、デバイス作製をNTTが担当した。
試作したAlN系SBDは、高品質のAlNバルク基板上にMOVPE(有機金属気相成長法)を用い、AlN/AlGaN超格子電流拡散層やSi添加AlGaN中間層、組織傾斜AlGaN耐圧維持層を形成した。その後、反応性イオンエッチングで電流拡散層を露出させ、耐圧維持層の上面にショットキー電極、電流拡散層の上面にオーミック電極を、それぞれ形成した。数値計算の結果、組成傾斜AlGaN耐圧維持層では、不純物を添加せずに約1×1017cm-3という電子密度が得られることを確認した。
東京大学は、作製したAlN系SBDの基礎特性を調べた。この結果、微分オン抵抗は0.34mΩcm2となった。この値は、これまで報告されたAlN系デバイスの中で最も小さいという。抵抗成分の内訳は、耐圧維持層が占める割合は3%程度で、コンタクト抵抗などの寄生抵抗が支配的であることが分かった。逆方向電流−電圧特性は耐圧400Vが得られ、この時の最大破壊電界は8MV/cm程度であった。デバイス構造を工夫すれば、さらなる高耐圧化や低損失化も可能とみている。
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