「スーパーサイクルに入る」とキオクシア、変動の谷も小さく:設備投資3年で1.4兆円へ(1/3 ページ)
キオクシアホールディングスは2026〜2028年度の3年間で年平均約4700億円の設備投資を実施する方針を示した。また同社副社長執行役員 財務統括責任者(CFO)の河村芳彦氏は今後の成長について「スーパーサイクルに入っていくと考えられる」と述べ、同社の事業構造が、安定的で高収益な成長を実現できる形へと大きく変化しているとの認識を示した。
キオクシアホールディングス(以下、キオクシアHD)は2026年6月2日、投資家向け説明会「Investor Day」を開催した。同社はAI推論市場の拡大を背景に、2026〜2028年度の3年間で年平均約4700億円の設備投資を実施する方針を示した。また副社長執行役員 財務統括責任者(CFO)の河村芳彦氏は今後の成長について「スーパーサイクルに入っていくと考えられる」と述べ、同社の事業構造が、安定的で高収益な成長を実現できる形へと大きく変化しているとの認識を示した。
データセンター/エンタープライズ向け比率60%超に
説明会ではまず、キオクシアHD社長の太田裕雄氏が生成AIの普及によってフラッシュメモリの役割が大きく変化していると説明した。太田氏は、2025年の経営方針説明会で「フラッシュメモリは単なるデータの保管庫ではなく、AIシステム全体のパフォーマンスを左右する重要な存在になる」と説明していたが、今回「この1年でその見立ては実際の需要として顕在化し、AIデータセンター向け需要が急速に拡大している」などと強調した。
特に2025年後半以降、AI活用の中心は大規模言語モデル(LLM)の学習から推論へと移行しつつある。さらに今後は、人間が利用するAIだけでなく、自律的に課題を解決する「Agentic AI」や「Physical AI」が普及し、推論処理量は爆発的に増加すると予測。太田氏はそのうえで「この推論フェーズで重要となるのが、計算速度、データ処理能力、消費電力を含めた総所有コスト(TCO)だ。膨大な推論処理をいかに経済的かつ効率的に実行するかがキーになる」と強調した。
推論処理の効率化に向けては、外部知識を活用するRAG(Retrieval-Augmented Generation)や、過去の推論結果を再利用するKV(Key-Value)キャッシュなどの技術開発が進んでいるが、「ただし、これらの進化がもたらす新たなメモリへの膨大な要求を全て広帯域メモリ(HBM)で対応することは困難だ」と言及。「とりわけAI活用がローカルでのデータ処理を前提とするエッジ領域へ広がる中、低消費電力かつ高速なストレージの重要性はかつてないほど高まっている。フラッシュメモリこそが、さまざまな市場の要求に応え、推論システムをTCOの観点から経済的にスケールできる唯一の記憶媒体だ」と強調した。
太田氏はまた、「当社の重要なパートナー」とするNVIDIAが提唱する、次世代AIストレージアーキテクチャにも言及した。具体的には推論効率向上のためにKVキャッシュを保存するメモリ階層としてSSDを活用する「Context Memory Storage(CMX)」や、回答精度の向上のため外部知識を記憶するRAGサーバにおいてもSSDを拡張メモリとして活用する「Storage-Next」構想などだ。
また、ストレージサーバに格納される生成結果についても加速度的に増加が見込まれるとし、「このような動きが意味するのは、AIシステムにおいて、GPUとHBMに並び、ストレージは性能を決定付ける中核となる構成要素だということだ」と強調。「当社はフラッシュメモリおよびSSDのスペシャリストとしてこれらの構想にさまざまな技術を積極的に提案し、パートナー企業とともに、AIのパラダイムシフトをリードしていく」と意気込んだ。
こうした市場変化を受けて、キオクシアHDは事業ポートフォリオの転換を進める。データセンター/エンタープライズ向け事業を成長の柱と位置付け、2028年度までに売上高に占める同分野の比率を60%超へ引き上げる計画だ。また「Super High IOPS SSD」など、AIシステム向けの高付加価値製品の提案を強化し収益性の向上も図る。一方、スマートフォンやPC向け事業についても、安定した事業基盤として維持しながら、エッジAI市場の開拓を進めていくとした。
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![NVIDIAが提唱する、次世代AIストレージアーキテクチャ[クリックで拡大]出所:キオクシアホールディングス](https://image.itmedia.co.jp/ee/articles/2606/02/jn2026ki002.jpg)