宅内と屋外用Wi-SUNのファームウェアを共通化、京大:単一のハードウェア上で動作可能
京都大学は、宅内および屋外の無線ネットワークに向けた2つの国際無線通信規格に対応できる共通ファームウェアを開発した。この共通ファームウェアはWi-SUNに対応した無線モジュールに搭載できる。
電気やガス、水道のメーター類を広域通信網とシームレスに接続
京都大学大学院情報学研究科の原田博司教授らによる研究グループは2026年5月、宅内および屋外の無線ネットワークに向けた2つの国際無線通信規格に対応できる共通ファームウェアを開発したと発表した。この共通ファームウェアはWi-SUNに対応した無線モジュールに搭載できる。
国際無線通信規格化団体「Wi-SUNアライアンス」は、宅内無線ネットワークに向けた規格として「Wi-SUN Enhanced HAN」を、屋外無線ネットワークに向けた規格として「Wi-SUN FAN」を、それぞれ制定している。ところが、Wi-SUN Enhanced HANとWi-SUN FANはこれまで、独立した規格として運用されており、宅内と屋外のネットワークは分離されていた。
こうした中で今回、日新システムズの協力を得てIoTルート用に拡張された「Wi-SUN Enhanced HAN」と広域向けマルチホップ通信規格「Wi-SUN FAN 1.1」を、1つのハードウェア上で動作させるための共通ファームウェアを開発した。
これにより、家庭やビル内に設置された各種センサーおよび、電気やガス、水道メーターなどで収集した情報を、最大24段の無線機による多段中継通信によって、広域通信網へシームレスに接続することが可能となった。
開発した共通ファームウェアは、「IEEE 802.15.4/4g/4eに対応した物理層とMAC層」を始め、「6LowPANやIPv6などIETF制定のアダプテーション層、ネットワーク層、トランスポート層」などをサポート。さらに、「中継を含む1対多のツリー構造型接続による通信機能」「RPLを用いたマルチホップ通信方式および周波数ホッピング機能」などを備え、認証・セキュリティ機能にも対応している。
京都大学は今後、開発した共通ファームウェアを、さまざまなWi-SUN対応無線モジュールに搭載し、Wi-SUN Enhanced HANとWi-SUN FANの大規模統合評価を実施する予定である。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
SiC LSIの事業化に挑む 28年以降ADCのサンプル出荷へ
京都大学 工学研究科 准教授の金子光顕氏は、炭化ケイ素(SiC)を用いた高温動作LSIの研究開発と事業化に取り組んでいる。まずは高温環境向けのA-Dコンバーター(ADC)開発を進め、2028〜2029年ごろのサンプル出荷を目指す。SiC LSIの可能性や社会実装に向けた課題、事業化の展望について聞いた。
高い性能を維持し光にも強い有機半導体材料を開発
京都大学は、理化学研究所や九州大学と共同で、優れた半導体特性を有する有機分子「ルブレン」の構造を改良し、優れた性能と光に対する安定性を両立できる有機半導体材料「縮環ルブレン(FR)」を開発した。分子の曲がり方によって光学的/電気的性質が変化することも分かった。
原子1層の半導体から生じる光信号を40倍以上に増強、京大ら
京都大学と自然科学研究機構(NINS)、神戸大学らの研究グループは、原子1層の半導体「単層二硫化タングステン(WS2)」にシリコンナノ球を組み合わせることで、第二高調波発生(SHG)の信号を最大で40倍以上に増強しながら、約80%という高い円偏光度を保つことに成功した。
有機薄膜太陽電池の課題を解決する新材料を開発、TRCら
広島大学と京都大学、理化学研究所、筑波大学および、東レリサーチセンターは、新たに開発した発電材料を用いることで、有機薄膜太陽電池(OPV)で課題となっていた「低電圧損失」と「高効率電荷生成」の両立を実現した。電圧と電流が同時に向上するという現象の起源も突き止めた。
2μm帯赤外線レーザー発振に成功、AKMら
旭化成エレクトロニクス(AKM)と京都大学の研究グループは、光源構造を最適化したことで、2μm帯赤外線フォトニック結晶レーザー(PCSEL)の発振に成功した。生体内物質の非侵襲センシングなど、従来技術では対応が難しかった用途に提案していく。
「世界初」半金属で高い熱電性能を示す物質の電子構造を観測
岡山大学と名古屋大学、京都大学、広島大学および、高エネルギー加速器研究機構(KEK)らの研究グループは、高い熱電性能を示す半金属「Ta2PdSe6」において、電子が集団的電荷振動と結合した新しい準粒子状態「プラズモニックポーラロン」を初めて直接観測することに成功した。

