SiC LSIの事業化に挑む 28年以降ADCのサンプル出荷へ:京都大学 工学研究科 准教授 金子光顕氏(1/3 ページ)
京都大学 工学研究科 准教授の金子光顕氏は、炭化ケイ素(SiC)を用いた高温動作LSIの研究開発と事業化に取り組んでいる。まずは高温環境向けのA-Dコンバーター(ADC)開発を進め、2028〜2029年ごろのサンプル出荷を目指す。SiC LSIの可能性や社会実装に向けた課題、事業化の展望について聞いた。
半導体材料として優れた耐熱性や高耐圧性、低損失特性を備える炭化ケイ素(SiC)。パワーデバイスでの活用が盛んだが、耐熱性や耐放射線性を生かして、シリコン(Si)では対応が難しい過酷環境に向けたLSIの研究開発も行われている。
現在、SiC LSIの事業化に向けた取り組みを進めているのが、京都大学 工学研究科 准教授の金子光顕氏だ。金子氏に、現在の研究開発の進捗や事業化の展望について聞いた。
――パワーデバイス材料として活用されることが多いSiCで、LSIに着目したのはなぜですか。研究を始めた当初から事業化を目指していましたか。
金子光顕氏 SiCは耐熱性に優れた材料だ。パワーデバイス材料としても有効だが、Si LSIの動作温度限界がずっと課題となっていた中で、SiCの耐熱性を生かさない手はないと考え、SiC LSIの研究を始めた。
当初から社会実装はもちろん目指していたが、自ら事業化することは考えていなかった。しかし、SiCパワーデバイスの導入は「Siからの置き換え」で既に市場があり進みやすかったのに対して、SiC LSIは「Siでは対応できないほどの高温環境」という新しい市場を開拓することになるので、大手企業が手を出すのは難しいことが分かった。そのため、現在は自ら事業化しようと考えている。
――SiC LSIの社会実装に向けた国内外の研究動向はどのようになっていますか。
金子氏 米国ではNASAが金星探査に向けて開発を進めていて、NASAの技術を利用したスタートアップのOzark Integrated Circuitsなどもある。米国はエネルギー開発や航空宇宙、防衛産業が盛んで、高温で動作するLSIの需要が高い。中国はSiCパワーデバイスでは勢いがあるが、SiC LSIの開発を積極的に行っているという情報は見られない。日本では広島大学でもSiC LSIの研究が進んでいる。
各研究機関は連携するというより、それぞれ独自に研究を進めている状況だ。回路方式も、NASAはJFETと抵抗を用いた回路で、広島大学は相補型MOSFET、京都大学は相補型JFETと異なっている。京都大学が研究している相補型JFETは、NASAが採用する抵抗を用いた回路方式と比べて消費電力を大幅に低減できるメリットがある。
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