SSDはAIシステムの中核に、推論AI市場を攻めるキオクシア:CAGR 86%の市場を狙う(1/2 ページ)
キオクシアホールディングス(以下、キオクシアHD)は2026年6月2日、投資家向け説明会「Investor Day」を開催。同社のSSD事業部長である横塚賢志氏が、AI領域におけるSSD事業戦略を語った。
キオクシアホールディングス(以下、キオクシアHD)は2026年6月2日、投資家向け説明会「Investor Day」を開催。同社のSSD事業部長である横塚賢志氏が、AI領域におけるSSD事業戦略を語った。同氏は、AIシステムの進化によってSSDが推論AIシステムの「中核」に位置付けられていると説明し、市場拡大を取り込む方針を示した。
25年度のSSD、生成AI向けシステム関連で大きく進展
横塚氏はまず、2025年度について「生成AI向けシステム関連ビジネスが大きく進展した1年」と振り返った。AIインフラ投資の拡大を背景に、キオクシアの製品はデータセンター、エンタープライズ、PCなど幅広い領域で採用が進んだという。
同時に2025年度は、今後のAIシステム進化を見据えた重要な製品や技術を発表した年でもあったと説明。その1つが、245TB(テラバイト)という大容量を実現したQLC SSD「KIOXIA LC9シリーズ」だ。同社はこれを「業界最大クラス」の容量としていて、急拡大するAIデータ需要への対応を狙う。既に主要顧客での評価/検証を完了し、市場投入を開始しているという。
もう1つが生成AI向けオープンソフトウェア「KIOXIA AiSAQ(アイザック)」だ。近年、生成AIの回答精度向上を目的として、外部データベースを参照するRAG(Retrieval-Augmented Generation)の導入が急速に進んでいる。しかし従来のRAGシステムでは、検索対象となるベクターデータベースがDRAM容量やCPU性能に制約されるという課題があった。
KIOXIA AiSAQはSSDとGPUを効率的に活用することで、この課題を解決。数十億規模のベクターデータを高速かつ低コストで処理できるという。KIOXIA AiSAQは代表的なオープンソースベクターデータベースの「Milvus」とも統合。また、GPUを活用した高速ベクトル検索ライブラリである「NVIDIA cuVS」とも連携していて、「数十億ベクター規模のデータベース構築時に、CPUのみで構成した場合と比べ最大約20倍のインデックス作成高速化を実現した」という。
横塚氏は、KIOXIA AiSAQを「生成AI基盤のスケーラビリティと実用性を大きく向上させる重要技術だ」とし、今後もさまざまなエコシステムとの統合を進めていく考えを示した。
SSDが推論AIシステムの中核に
従来の推論AIは、GPUを搭載した推論サーバに簡易的なRAGシステムとストレージを組み合わせる比較的シンプルな構成が主流だった。しかし、AIが自律的に複数回の推論を実行するAgentic AIでは、KV(Key-Value)キャッシュやRAGで扱うデータ量が大幅に増加する。これによりGPU内の広帯域メモリ(HBM)だけでは処理しきれなくなり、ストレージ性能がシステム全体の性能を左右する重要な要素になりつつあるという。横塚氏は「AIの進化に伴い、計算性能だけではなく、ストレージを含めたシステム全体の性能要件が大きく引き上げられている」と説明した。
こうした課題に対し、現在はNVIDIAを中心にさまざまな推論AI向けソリューションが提案されている。横塚氏は、それらに共通する特徴として「SSDが極めて重要な役割を担っていること」を挙げた。
まず、GPUメモリ不足への対応だ。Agentic AIではKVキャッシュが急増し、HBMだけでは処理しきれなくなる。そこでNVIDIAが提唱する「CMX(Context Memory Storage)」では、高速SSD上にKVキャッシュを展開し、推論効率を維持する。さらに「NVIDIA Storage Next」ではGPUがSSDへ直接アクセスし、SSDを実質的なメモリ拡張領域として利用する。またRAGシステムにおいても、大規模なデータベースを高速に検索するためには高性能なSSDが必要になる。さらに生成AIの普及に伴い保存すべきデータ量そのものも急増していて、大容量ストレージ基盤の重要性も高まっている。
横塚氏は「新しい推論AIシステムはAIの進化による構造的課題を解決するアーキテクチャであり、その中核にSSDが位置付けられている」と強調した。
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