SSDはAIシステムの中核に、推論AI市場を攻めるキオクシア:CAGR 86%の市場を狙う(2/2 ページ)
キオクシアホールディングス(以下、キオクシアHD)は2026年6月2日、投資家向け説明会「Investor Day」を開催。同社のSSD事業部長である横塚賢志氏が、AI領域におけるSSD事業戦略を語った。
推論AIシステムによる新たな用途に対応、キオクシアの3つの製品群
こうした新用途に対応するため、キオクシアは3つのSSD製品群を展開する。
1つ目がTLCフラッシュメモリ搭載高帯域SSD「KIOXIA CMシリーズ」だ。同シリーズはCMXに対応し、KVキャッシュ用途を想定し、Agentic AIにおける長時間推論や多段推論で増加するデータを効率的に保持できるよう設計した。
最先端NANDフラッシュメモリの採用によって大容量化にも対応しているほか、内製SoC(System on Chip)によって高い電力効率も実現している。さらにPCIe最新世代やNVMe、OCPなど最新規格に対応し、液冷システムを採用した高密度AIサーバ環境でも安定した性能を発揮するという。
2つ目が「XL-FLASH」搭載高性能SSD「KIOXIA GPシリーズ」だ。これはNVIDIA Storage Next向けに開発された製品で、GPUとの直接連携を前提としている。最大の特徴は、専用NANDであるXL-FLASHと専用SoCの組み合わせだ。一般的なSSDよりも細かな512バイト単位でのアクセスを可能にし、極めて低いレイテンシと高いIO性能を実現する。
横塚氏によると、次世代AIシステムでは100M(1億) IOPS(Input Output Per Second)を超える性能が求められるという。GPシリーズはこうした要求に応える製品として開発が進められている。横塚氏は「この性能によりSSDをHBMの拡張、補完領域として活用することが可能となり、メモリ制約の緩和によって新しいAIシステム構成を実現する。GPシリーズは、推論AIシステムにおける低レイテンシ、高IOPSデータアクセスを担う主力製品だ」と述べていた。
キオクシアHDは、GPシリーズについて限定顧客向けで2026年末までに評価用サンプル出荷を始める予定だ。また、2027年には第3世代XL-FLASHとPCIe 7.0で1億IOPSを実現する計画を立てている。
3つ目がQLCフラッシュメモリ搭載大容量SSD「KIOXIA LCシリーズ」だ。同シリーズは第8世代「BiCS FLASH」の2Tbit QLCを採用する。さらに高度なパッケージ技術によって小型パッケージ内に32枚のメモリチップを積層し、E3.Lフォームファクターで245TBという容量を実現した。既に量産出荷を開始していて、超大容量サーバで採用されているという。AIの進化によって生成データや推論履歴、学習データなどは急速に増加している。LCシリーズはこうした大容量データを低コストで保存する基盤として位置付けられる。
同社はデータセンターSSD向けNANDフラッシュ市場のうち、これらの製品がターゲットとする推論AIシステム向けは2025〜2028年まで年平均成長率(CAGR) 86%の成長が予測されていることを示している。横塚氏は「CMシリーズによる高帯域データ転送、GPシリーズによる超低レイテンシ/高IOPS性能、LCシリーズによる超大容量データ蓄積というポートフォリオを通じて、推論AIシステムの性能向上とスケーラビリティ実現を支援する」と説明した。
データセンターSSD向けNANDフラッシュ市場のうち、これらの製品がターゲットとする推論AIシステム向けは2025〜2028年まで年平均成長率(CAGR) 86%の成長が予測されている[クリックで拡大] 出所:キオクシアホールディングス
既にハイパースケーラーらで量産採用/認定段階
質疑応答では、それぞれの製品の成長見込みに関して質問が出た。これに対し横塚氏は、推論AI市場全体が今後も高成長を続けるとの見方を示した上で、まずはLCシリーズ、そしてCMシリーズに大きな成長機会があると説明した。
LCシリーズについては、生成AIやAgentic AIの普及によってデータ量そのものが増加することから、大容量ストレージ需要の拡大が見込めるという。CMシリーズについても、RAG向けシステムやシステムストレージ用途を中心に需要拡大を期待しているとした。それぞれの競争力についても、既にハイパースケーラーを含む主要顧客で量産採用あるいは認定段階にあることを挙げ「当社のSSDドライブの技術的ポテンシャルは高い」と強調した。
さらに横塚氏は、GPシリーズで採用するXL-FLASHの独自性を強調しつつ「既に量産品を持っているほか、次世代品も計画している」と説明。NANDフラッシュの開発およびコントローラーの両面で差別化を進めることで、低レイテンシが求められるAI市場向けに競争力の高い製品を継続的に投入していく考えを示した。
同社社長の太田裕雄氏も、XL-FLASHについて「こうしたタイプのチップを持っているのは現時点では当社だけだ。このチップを有効活用し、NVIDIAが提唱するStorage-Nextのスペックに適合したSSDの開発を進めている。年内にも、できるだけ早く顧客へ提供し評価をしてもらい、どういった判断をされるかしっかり見極めたい」と語った。太田氏はまた、XL-FLASHは同社のBiCS FLASH技術を活用して製造できるため、生産面でも柔軟性が高いとも説明。「市場を見極めながら、付加価値の高い分野として事業を拡大していきたい」と述べた。
SSDの競争環境については、中国メーカーの動向に関する質問も出た。これに対し太田氏は、中国メーカーは現在のところコンシューマー市場向けが中心との見方を示した。「中国メーカーは地政学的な要因もあり、中国国内市場にある程度制約されている。また、中国のデータセンター市場自体もまだそれほど大きくなく、SSDコントローラーも現時点では自社では持てていない。しばらくはこの分野でわれわれがしっかりと勝っていけると考えている」と語った。
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