広い視野で高精細に観察できるX線撮影技術、理研ら:ナノ領域で起こる現象を一瞬で撮影
理化学研究所(理研)と大阪大学の研究グループは、ナノメートル領域で一瞬に起こる構造変化などを、広い視野で高精細に捉えることができる「X線撮影技術」を開発した。
X線ビームのホログラムで生じる「ゆがみ」や「ゆらぎ」も補正
理化学研究所(理研)と大阪大学の研究グループは2026年6月、ナノメートル領域で一瞬に起こる構造変化などを、広い視野で高精細に捉えることができる「X線撮影技術」を開発したと発表した。
X線撮影技術を応用すると、半導体回路やナノ材料など、目視では確認できない微細な構造を非破壊で観察できる。近年はX線自由電子レーザー(XFEL)など明るいX線光源が登場し、超高速で起こる現象の観察などが可能となった。しかし、1μmを超えるような広い範囲を観察しようとすれば、これまでは試料やX線ビームを移動させながら連続撮影する必要があり、測定に時間がかかるなどの課題があった。
そこで研究グループは、試料やX線ビームを移動させなくても、1回のX線照射だけで広い範囲を高い精度で撮影できるX線撮影技術の開発に取り組んだ。具体的には、「インラインホログラフィ」という撮影方法を用い、試料を広い視野で一度に撮影し微細な構造まで観察できるようにした。
高い分解能を得るため、理研と高輝度光科学研究センターが共同で建設したXFEL施設「SACLA(サクラ)」に設置された「Sub-10ナノ集光装置」を用い、XFELを10nm未満に集光した。しかも、10フェムト秒未満という極めて短いXFELパルスとして照射することによって、広い範囲を1回の照射で撮影することに成功した。
一方で、X線ビームによるホログラムには課題もある。撮影ごとに強度分布が変化する「ゆらぎ」と、X線光学素子表面の極めて小さい凹凸などによって生じる波面の「ゆがみ」である。これらが画質を低下させる原因となる。
そこで今回は、多数の測定データから「ゆらぎ」の特徴を抽出し、撮影ごとの変動を補正する手法と、「ゆがみ」を高い精度で計測し補正する手法を組み合わせた補正アルゴリズムを開発し、画像品質を向上させた。銀ナノキューブ試料を用い、開発した手法の有効性を検証したところ、XFELの単一パルスにより、1μmを超える視野において約10nmという分解能で画像を観察できることが分かった。
今回の研究成果を用いれば、「材料が壊れる瞬間の構造変化」や「核融合燃料が圧縮される瞬間」「半導体デバイス動作中の構造変化」「電池材料中をイオンが移動する過程」「生体分子が機能する時の構造変化」「機能性材料の相転移」などを、ナノメートルスケールで直接観察できるとみている。
今回の研究成果は、理研放射光科学研究センタービームライン開発チームの山口豪太特別研究員、SACLAビームライン基盤グループの矢橋牧名グループディレクター、大阪大学大学院工学研究科の山田純平准教授(理研放射光科学研究センタービームライン開発チーム客員研究員)らによるものである。
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