ムーア氏も予見していたチップレット集積 AI時代に重要性増す:SEMISOL 2026 基調講演(1/2 ページ)
横浜国立大学 教授の井上史大氏は、2026年6月に開催された「SEMISOL 2026」の基調講演で、AI時代における後工程技術の重要性が高まっていると強調した。ゴードン・ムーア氏も約60年前に、チップを分割して接続する考え方のコスト優位性を示唆していたという。
2026年6月10〜12日にかけて、半導体製造後工程に焦点を当てた展示会「SEMISOL 2026」が東京ビッグサイトで開催された。基調講演には、横浜国立大学 総合学術高等研究院 半導体量子集積エレクトロニクス研究センター 教授の井上史大氏が登壇。「次世代AIを支える半導体後工程ソリューションの現在地と未来」というタイトルで講演した。
「AIを使うか、冷房を使うか」
冒頭、井上氏はAIと電力問題に触れた。データセンターの消費電力に対する問題は深刻さを増している。国際エネルギー機関の試算によれば、データセンター1カ所で消費する電力は一般家庭100万世帯に相当するともいわれ、「データセンターの横には原子力発電所が必要になる」と主張され始めるほどになっている。
井上氏は「これまで半導体の性能は、処理速度で語られてきたが、現在は処理速度を大々的に主張することはほとんどない。“省エネ”でなければ、論文を投稿してもほとんど注目されない」と述べる。
2030年には、世界で生成される電力よりも、AIが消費する電力が上回るとの予測もある。「大学でも、AIを使うか冷房を使うか選ぶようにと言われている。私はAIを使わないことはもう考えられないので、冷房を我慢してAIを使うと思う」(井上氏)
井上氏は、AIが今後も普及していく中では「半導体が使うエネルギーの問題を本当に解決しないといけない」と危機感を語った上で、現在、半導体技術者は、どのように省電力化するかに、最初に注力するようになっていると紹介した。
ゴードン・ムーア氏も予見していたチップレット集積
井上氏は講演で、imecが発表したロジックデバイスのロードマップを示した。
業界では、2nm世代の時代がこれから本格的に到来する。TSMCは2025年第4四半期(10〜12月)に、ナノシートGAA(Gate-All-Around)を適用した2nmプロセス「N2」の量産を開始した。Rapidusも、2027年度後半に2nmでの量産を開始する予定だとしている。
一方で、現在は、技術が進むほどコストが掛かり、微細化しても消費電力が下がらないという大きな問題を抱えている。「最先端ロジックの分野では一部の半導体メーカーによる寡占状態になっていることに加え、低消費電力化も進まないことから、メーカーでは製品化が進まないという大きなジレンマがある」と井上氏は指摘する。
その解決策として注目されているのが、半導体製造後工程だ。特にチップレット集積は、再配線層(RDL)インターポーザー技術などを活用することで、「高性能化しようとすると、チップサイズがどんどん大きくなってしまう」というモノリシックのボトルネックを解消できるとして、期待されている。
「ムーアの法則」で著名なIntelの創設者、Gordon Moore(ゴードン・ムーア)氏も、チップレット集積の必要性を予測していたという。Moore氏は、1965年に発行された米技術雑誌「Electronics」で、後に「ムーアの法則」と呼ばれることになる、トランジスタの集積度の向上について言及している。「その記事の後半で、Moore氏は『今後の半導体を考えると、チップを小さくしていて、後で接続した方がコスト効率はいいだろう』とも述べていた」(井上氏)
チップレット集積のコンセプトは以前からあったが、「微細化の限界という側面もあるが、どちらかと言えば歩留まりや消費電力の限界、そしてAIブームが同時に重なったことで、チップレット集積の必要性がこれまでになく高まっている」と井上氏は続けた。
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