AI自律実験の「ブラックボックス」を解く 人が使える成膜ルールに:NTTがβ型酸化ガリウムで実証(2/4 ページ)
NTTは、AIとロボットを組み合わせた自律実験によって半導体材料の成膜条件を最適化するとともに、その過程で得られたデータから、人が理解/転用できる「成膜ルール」を抽出する技術を実証した。次世代パワー半導体材料として期待されるβ型酸化ガリウム(β-Ga2O3)を用いた実験では、「スパッタ法として世界で初めて」(NTT)の単結晶薄膜の作製にも成功した。
56回の自律探索、スパッタ法で「世界初」の単結晶薄膜
実証では、β-Ga2O3のスパッタ成膜を対象に、自動スパッタ成膜、自動光学評価、ベイズ最適化による次の成膜条件の決定を連携させた自律成膜基盤を構築した。
スパッタ装置内ではロボットがウエハーを搬送し、AIが提案した条件に基づいて成膜する。成膜後は光学測定データから薄膜品質を自動で解析/評価し、その結果を基に予測モデルを更新。AIが次に試す成膜条件を決定し、再び成膜するというサイクルを繰り返す。なお、ウエハーをセットする作業や、成膜後のサンプルを移送する作業の一部には人手が残る。
最適化したのは、温度、スパッタ電力、アルゴン(Ar)流量、酸素(O2)流量の4つのパラメーターだ。薄膜品質の指標には、膜中の欠陥や原子配列の乱れと相関する「アーバックエネルギー(EU)」を使用した。EUは小さいほど欠陥や乱れが少なく、光学的な品質が高いことを示す。
まずサファイアウエハー上で56回の自律探索を実施し、スパッタ法によるβ-Ga2O3薄膜として、報告されている中で最小となるEU=182meVを示す成膜条件を見つけた。この条件をβ-Ga2O3基板上の成膜に転用することで、高品質なβ-Ga2O3単結晶薄膜を実現した。
β-Ga2O3は約5eVの大きなバンドギャップを持ち、高い電圧に耐えやすいことから次世代パワーデバイスへの応用が期待されている。一方、大面積化や低コスト化に有利なスパッタ法による高品質な単結晶薄膜の形成は未成熟な技術だった。NTTによると、スパッタ法によるβ-Ga2O3単結晶薄膜の作製は「世界で初めて」だという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

