時速350kmのレースで「水平」維持、ソニー スタビライザーLSI:1.5フレームの低遅延(1/3 ページ)
イメージセンサー大手ソニーセミコンダクタソリューションズが、約1.5フレームの低遅延で映像のブレや傾きを補正するスタビライザーLSIの市場開拓を進めている。MotoGPなどで採用が広がる同製品の詳細を担当者に聞いた。
イメージセンサー大手のソニーセミコンダクタソリューションズ(以下、SSS)が、映像のブレや傾きを補正するスタビライザーLSIの市場開拓を進めている。
スポーツ中継では、競技車両や選手、ドローンなどに小型カメラを搭載した撮影が広がる一方、カメラ自体の激しい動きをリアルタイムで補正する必要がある。同社の製品はロードレース世界選手権「MotoGP」の車載カメラをはじめ、トレイルランニングやFPV(First Person View)ドローンを用いた撮影などで採用が広がり、さらにテレビドラマ撮影での実用化に向けたPoC(概念実証)なども進んでいるという。なぜSSSがスタビライザーLSIを手掛けるのか、そしてその製品はどのような特徴を備えているのか。同社担当者に詳細を聞いた。
ブレ、水平、ひずみなど専用LSI化によって高速一括処理
SSSのスタビライザーLSI「CXD5254GG」は、イメージセンサーと後段の画像処理LSIの間に配置する11mm角のコンパニオンチップだ。イメージセンサーから入力されるRAWデータと、IMU(慣性計測ユニット)から得た加速度/ジャイロデータを組み合わせて、EIS(電子式ブレ補正)や水平補正、ローリングシャッターによって映像が波打つ「ジェロ現象」の補正、レンズのひずみ補正などを行う。処理後のデータはRAWデータとして、画像処理LSIに出力する。
一般的なアクションカメラなどでは、こうした補正をISP(Image Signal Processor)やAP(Application Processor)側で行う場合が多い。SSSは、専用LSIであるCXD5254GGで処理することで低遅延化を実現した。イメージセンサーから映像を受け取り、上述の全ての信号処理をして後段の画像処理LSIに渡すまでの遅延は、わずか約1.5フレームだという。これによって、リアルタイム性が求められる用途でも遅延のない滑らかな映像を提供するとしている。
SSSはCXD5254GG単体のほか、同LSIおよび同社の有効約1230万画素イメージセンサー「IMX577」を組み合わせた放送/映像制作用カメラモジュール「ESC-A0600」「ESC-A0700」「ESC-A1000」を展開している。3製品は標準、挟角、広角といった画角の異なるカメラヘッドを備え、用途に応じて選択できる。
カメラヘッドでは、イメージセンサーを搭載した基板の真裏IMUを配置。IMUで検出した振動や揺れの情報と、イメージセンサーからの映像信号を合わせて後段に送り、最初の信号処理をCXD5254GGが行う形だ。カメラヘッドと信号処理用の基板とは細線同軸ケーブルで接続。信号処理基板は3枚の基板をリジットフレックスで接続した構造で、柔軟に折り曲げられるため、高いカメラ筐体の設計自由度を高められるという。
モジュールは、魚眼レンズで広い範囲を撮影し、その中から必要な領域(フルHD相当)を切り出す仕組みで、上述の通りブレ補正のほか、カメラが傾いた際に遠景を水平に保つ水平補正、魚眼レンズのディストーション補正、ジェロ現象の補正などをリアルタイムで行う。
説明担当者は「専用LSIであるがゆえに、ISPやAP、ソフトウェア処理と比較して圧倒的に信号処理が速い。また、ユースケースに応じて最適な補正にチューニングできる点も特長で、スポーツエンタテインメントで多くの引き合いがある」と強調していた。
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