半導体の「データ移動」を効率化 米IP新興が日本進出:HPCや車載、ロボティクスに商機(1/2 ページ)
AIやチップレットの普及によって半導体設計が複雑化する中、チップ内/チップ間の「データ移動」に着目したファブリックIPを手掛けるBaya Systemsが、日本市場での事業を本格化している。日本では高性能コンピューティング(HPC)や車載に加え、エッジ、コンシューマー、ロボティクス分野にも商機を見込む。
AIの普及や半導体の高性能化に伴い、CPUやGPU、メモリなどの間でやりとりされるデータ量が増えている。システムの性能向上には、演算性能を高めるだけでなく、チップ内やチップ間でデータをいかに効率よく移動させるかも重要になってきている。
この「データ移動」の課題に取り組むのが、米国の半導体IP(Intellectual Property)スタートアップBaya Systemsだ。2023年に設立され、現在は世界で約125人の従業員を抱える。これまでの資金調達額は4800万米ドルだ。
同社は2026年、日本市場での事業を本格化した。日本では直接販売を行うとともに、人材の採用も進めている。
半導体の「データ移動」に着目
Baya Systemsが提供するのは、チップ内/チップ間でデータをやりとりするためのファブリックIP「WeaveIP」と、その設計を支援するソフトウェアプラットフォーム「WeaverPro」だ。
SoC(System on Chip)には、CPUやGPU、NPU、メモリコントローラーなどさまざまな機能ブロックが搭載される。これらを接続し、必要なデータを必要な場所に届けるのがファブリックの役割だ。
AI処理の高度化やチップレットの普及によって、こうした接続構造は複雑さを増している。一方で、半導体メーカーには性能だけでなく、消費電力やチップ面積、開発期間の短縮も求められる。
Baya Systems設立の背景にあるのが、AI時代のコンピューティングにおける「データ移動」の課題だ。Baya Systems 創業者兼CEOのSailesh Kumar氏によると、同社 取締役会会長のJim Keller氏は2023年、「AIシステムでは演算性能そのものだけでなく、メモリやIO、各プロセッサ間でのデータ移動がボトルネックになっている」と指摘。これを解決することを目指してBaya Systemsを設立したという。
同社はこの課題に対し、ファブリックIPだけでなく、その設計やシミュレーションを行うソフトウェアまで一体で提供する。
「完成したIP」ではなく、顧客に合わせて構築
Baya Systemsが既存のファブリックIPベンダーとの違いとして強調するのが、ソフトウェアを起点とした設計だ。
一般的なファブリックIPでは、あらかじめ用意されたIPをベースに、顧客のSoCに合わせてカスタマイズする。一方、Baya SystemsはWeaverProを使って要求仕様やワークロードを基にシステムを検討し、顧客ごとにファブリックを構成できることを特徴とする。既存のファブリックを部分的に変更するのではなく「顧客が作りたいシステムに合わせてイチから構築し、最適化する」という考え方だという。
WeaverProでは、ファブリックやキャッシュ/メモリ構成をシミュレーションし、設計の早い段階から性能を確認できる。Baya Systemsによると、従来は数週間から数カ月かかることもあった設計の検討を、数時間単位で繰り返せるという。
複数のプロトコルやモノリシックSoC、チップレットを共通のプラットフォームで扱えることも強みとする。システム全体を見ながらデータの流れを解析できるので、個別のIPだけを見ていては把握しにくいボトルネックの発見や最適化につなげられるとしている。
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