半導体誘致で対照的な日韓、共通する「官」「民」のズレ:大山聡の業界スコープ(104)(1/3 ページ)
半導体工場の誘致を目指す韓国・光州のフォーラムに参加した。しかし、誘致対象のSamsung ElectronicsとSK Hynixの姿はなく、政府の熱意と企業の姿勢には隔たりがうかがえた。半導体産業を巡る状況は対照的な日韓だが、「官」と「民」の意思のズレは共通する。両国の事例から、企業の実態と意思を踏まえた半導体戦略の必要性を考える。
2026年9月10日、筆者は韓国の光州で行われた「半導体・AIフォーラム」に招かれ、講演する機会をいただいた。光州では韓国政府や地元自治体が多額の資金を投入し、半導体およびAIの拠点を構築しようとする「肝いり」プロジェクトが動いている。ストレートに言えば、Samsung Electronics、SK Hynixの韓国の二大半導体メーカーに対して、メモリ工場の誘致活動をしようとしているのだ。それにはTSMCの工場誘致に成功した日本の熊本の事例が参考になるはずだ、と主催者が考えたようで、筆者のような日本人が講演者として招待された。しかし結論から申し上げると、光州のプロジェクトは推進が極めて困難ではないか、と筆者は懸念している。ここでは、今回のフォーラムの実態から読み取れる韓国の状況について、日本における「半導体誘致」と比較しながら述べてみたい。
Samsung、SK Hynixからの参加者がいない
光州のプロジェクトはSamsung、SK Hynixの賛同なくして成功するとは思えない。この2社こそが誘致対象の主役であり、光州での工場建設にこの2社がもろ手を挙げて賛同しているのであれば、このプロジェクトはスムーズに推進されると思われる。しかし、140〜150人が参加した大規模なフォーラムであったにもかかわらず、この2社からの参加者はいなかった。もちろん、不在だったからと言って「構想に反対」とは限らない。何らかの理由で参加できなかっただけかもしれない。しかしそれなら今回、「肝いり」ぶりを強調しながら基調講演していた国会議員や地元市長に対し両社は「このプロジェクトには期待している」とか「われわれも工場建設を前提に検討している」といった何らかのコメントを託すこともできたはずである。しかし残念ながらそのようなコメントが紹介されることはなかった。少なくとも、大手2社がこのプロジェクトに「もろ手を挙げて賛同」しているわけではなさそうだ。
筆者は今回のような韓国でのフォーラムやイベントには初めて参加したので、どんな状況が普通なのか、他のイベントと今回のイベントの何が具体的に違うのか、正直に申し上げてよく分からない。しかし、このフォーラムの規模や、基調講演を行った要人たちの肩書、さらには開催時に全員が起立して左胸に右手を当て、韓国国歌を斉唱する姿などを見る限り、関係者たちの並々ならぬ決意を感じた。当然かもしれないが、「何が何でも成功させたい」「光州を半導体およびAIの中心拠点にしたい」という思いが強く感じられたのである。しかしそうであれば、なおさら「大手2社」の賛同を取り付けることが最優先ではないだろうか。
新たな拠点が必要な韓国
韓国では半導体産業への投資が極めて活発化しているが、既存の半導体拠点(竜仁・平沢)がすでに限界に達している、という問題を抱えている。具体的には、土地不足、電力・水インフラのひっ迫、サプライヤー集積の過密化、などである。このため、新規の大規模投資を首都・ソウル近郊以外に分散させる必要が生じている。韓国の南西部に位置する光州はその候補地の1つであり、2020 年以降、韓国政府が「AI先導都市」として育成してきた地域でもある。つまり、光州はAIの基盤がすでにある都市であり、半導体と結び付けることで半導体および、AIの統合クラスタを形成しやすい構造になっている。
さらに光州は半導体/AIだけでなく、次世代自動車産業団地、自動運転システムの実証都市、スマートエネルギー産業地区、グリーンテクノロジー企業の集積など、未来産業の実証都市として整備が進んでいる。韓国政府としては、これらの産業も半導体/AI産業との関連性が強いため、光州エリアに対して非常に積極的な姿勢をみせている。
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