リチウム金属電池の保護膜形成 原子レベルで解析、可視化:他材料にも適用可能
東京大学とENSTA Parisの研究グループは、機械学習を活用したシミュレーションにより、リチウム金属電池の保護膜形成過程を可視化することに成功した。この解析手法はさまざまな電極材料と電解液の界面で起こる反応の解析に適用できるという。
さまざまな電極材料と電解液の界面で起こる反応の解析に適用可能
東京大学大学院工学系研究科の山田淳夫教授や竹中規雄特任講師、岩田大河大学院生(研究当時)および、ENSTA ParisのTheophane Bernhard大学院生(同)らの研究グループは2026年10月、機械学習を活用したシミュレーションによって、リチウム金属電池の保護膜形成過程を可視化することに成功したと発表した。この解析手法はさまざまな電極材料と電解液の界面で起こる反応の解析に適用できるという。
リチウム金属電池は、一般的なリチウムイオン電池に比べ、高いエネルギー密度を実現できる。このため、電気自動車や再生可能エネルギーなどの用途に向けた蓄電池として期待されている。
ところが、リチウム金属は極めて反応性が高く、電解液と接触すれば電解液が分解し、電極表面に保護膜となる固体電解質界面(SEI)が形成される。この組成や構造によって、電池の寿命や安全性、充放電効率が大きく左右されるという。しかし、SEIが形成される詳細なメカニズムは、これまで十分に解明されていなかった。
研究グループは今回、リチウム金属表面で起こる電解液の分解反応からSEI形成までの過程を、原子レベルで追跡し解析できる手法を開発した。具体的には、第一原理計算を学習した機械学習力場を用い、約4000原子からなる大規模なリチウム金属/電解液界面のシミュレーションを可能にした。また、シミュレーション中に原子間で生じる結合の生成と切断を自動的に検出し、多くの反応生成物や反応経路を抽出できる自動反応解析手法も開発した。
解析の結果、電解液の組成によってリチウム金属表面で優先的に分解する成分が変化し、形成されるSEIの組成や空間構造も、それに伴って大きく変わることを明らかにした。特に、LiFSI/EC高濃度電解液では、リチウム金属表面近傍にLi2Oが、その外側にLiFが、それぞれ分布することを確認した。
この結果は、実験による観測結果と整合しているという。これにより、実験で観測が困難なSEI形成過程でも、今回の手法を用いれば原子レベルで可視化できるとみている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
移動度に4倍超の差 有機半導体の鍵は「分子運動」
東京科学大学と東京大学、北里大学、筑波大学らによる研究グループは、有機半導体のデバイス性能に、デバイス界面における分子の構造や動的な振る舞いが大きく影響することを実証した。有機半導体デバイスのさらなる高性能化が期待される。
「原子1層」のp型BCNを2インチで作製 東大
東京大学は、p型2次元半導体として動作するホウ素炭素窒化物(BCN)を初めて実現するとともに、この単層p型BCNを2インチウエハー上に作製した。原子置換により電子状態を変化させる方法を原子1層のBCNに応用することで実現した。
磁気相転移を活用 次世代磁気メモリで新機能発現へ
大阪大学の研究グループは、東京大学や沖縄科学技術大学院大学と共同で、ファンデルワールス強磁性体「Fe5GeTe2(FGT)」が常磁性から強磁性へと磁気相が変化する際に、電流をスピン流に変換する効率が約1桁も変わることを明らかにした。
見えない光で発電、無色透明な有機太陽電池を開発
大阪大学と東京大学、青山学院大学、artienceらによる共同研究グループは、人の目に見えない「近赤外光」で発電する、無色透明な「有機太陽電池(OSC)」を開発した。建物や自動車の窓ガラス、ウェアラブルデバイスなどに組み込むことが可能となる。
光とひずみを検知できるフレキシブルセンサー開発、東京大
東京大学は、光強度とひずみ(伸縮)を1つのセンサーで検知できる「フレキシブルマルチモーダルセンサー」の開発に成功した。このセンサーをアレイ状に並べると、ヘルスケアやロボットの電子皮膚など、ストレッチャブルエレクトロニクスに応用できる。
次世代MRAM開発に向けた設計指針示す、東京大
東京大学の研究グループは、反強磁性体を用いた次世代MRAM開発において、超高速スイッチングを実現するための設計指針を示した。

