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普及間近の環境発電、センサーとの融合で省エネと快適を両立へエネルギー技術 エネルギーハーベスティング(3/4 ページ)

太陽光や振動、熱、電磁波―。われわれの周囲には、普段意識されていないものの、さまざまなエネルギー源が存在する。このような微弱なエネルギーを有用な電力源として抽出する「エネルギーハーベスティング(環境発電)技術」に注目が集まっている。欧州や米国を中心に、環境発電技術を使った空調制御や照明制御スイッチの導入が進んでいるが、日本国内ではほとんど使われていないのが現状だ。それはなぜか。環境発電技術に特有の技術的な難しさや、最近の動向をまとめた。

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 環境発電を使うシステムの難しさは、それぞれのブロックの特性のみならず、システム全体として十分な特性を確保する必要があることだ。アナログ半導体のベンダー各社は、環境発電向けの製品分野を、「チャレンジングな市場」として注目している(図4)。

 例えば、Linear Technologyは、2009年12月に同社にとって初の環境発電に特化した電源IC「LTC3108」を製品化して以降、品種拡充を続けてきた。現在、環境発電に特化した電源ICを6品種販売しており、業界で最も幅広い品種をそろえている。このうちの幾つかの品種は、最終製品に採用され、量産を始めているという。「環境発電の通信モジュールは、アナログ/パワー部品の性能が、全体の正否を決める鍵になる。取り扱いの難しい電力源をいかに使いこなすかというところに当社の強みがある」(同社)。

図
図4 アナログ/パワー部品に強い半導体ベンダー各社が環境発電市場に注目している (a)は、Linear TechnologyのDC-DCコンバータIC「LTC3588」や、Energy Microの32ビットマイコン「EFM32 Geckoシリーズ」、ZigBee通信用無線チップなどで構成したデモ基板。振動をエネルギー源にデータを送る。(b)は、Texas Instrumentsの開発キット「eZ430-RF2500-SEH」。太陽発電セルを搭載している。(c)は、Maxim Integrated Productsの電源管理IC「MAX17710」のデモ基板。

 Texas Instrumentsは、環境発電をエネルギー分野の市場の1つと位置付け、低消費電力のマイコン「MSP430」やRFトランシーバIC、電源ICと、異なる回路ブロックの品種を数多く用意している。それぞれの品種は、環境発電に特化しているというわけではないが、環境発電に適した特性を有していると説明する。例えば、MSP430シリーズでは、0.9V駆動の品種やFRAM内蔵の品種などがある。RFトランシーバICについては、ZigBee規格やIEEE 802.15.4規格に準拠した独自プロトコル、EnOcean Allianceの独自プロトコルに対応した品種を製品化済みである。

 Maxim Integrated Productsは、同社にとって第1弾となる環境発電向け電源管理IC「MAX17710」を、2011年6月に発売した(関連記事)。固体薄膜電池を手掛けるInfinete Power Solution(IPS)の固体二次電池「THINERGY MEC」に最適化しており、バッテリーチャージャ機能に加え、過電圧保護や低電圧誤動作防止、外付けバッファコンデンサ管理機能、LDOレギュレータといった豊富な機能を集積したことが特徴である。

 同社は、モバイル機器を対象にした電力管理ICの製品群を有しており、このノウハウを環境発電向けの品種に展開した。1年半ほど前から開発を進めてきたという。「当社は、アナログ/ミクスドシグナルの新市場や新技術に注目して研究開発を進めている。環境発電も注目分野の1つで、継続して製品を出していく」(同社)という。

図
図5 Infinete Power Solutionの固体二次電池 薄型で、1万回以上のサイクル寿命を有することや、安全性が高いことが特徴。

 Infinete Power Solutionの固体二次電池は、薄型で、1万回以上のサイクル寿命を有することや、安全性が高いことなど、環境発電に適した性能を持つ。「これまでのリチウムイオン二次電池のイメージをぬぐい去る電池だ。これによって、リチウムイオン二次電池を使える用途が、だいぶ広がるだろう」(IPSの販売代理店である東京エレクトロンデバイス)という(図5)。

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