HPとHynix、メモリスタを2013年に商品化へ:メモリ/ストレージ技術
抵抗、コンデンサ、インダクタに続く“第4の回路素子”と呼ばれるメモリスタが、2013年にも商品化される見込みである。フラッシュメモリの置き換えを狙うが、ビット当たりの価格をいかに下げるかが今後の課題となりそうだ。
HP Labsでシニアフェローを務めるStan Williams氏は、Hewlett Packard(HP)が2008年から開発を手掛けてきたメモリスタを、今後18カ月以内に市場に投入する計画を明らかにした。同氏は、「フラッシュメモリの市場シェアを奪うことが可能」だとしている。メモリスタは2端子の半導体素子で、不揮発性を備える。抵抗器、コンデンサ、インダクタに続く“第4の回路素子”とも呼ばれる。
Williams氏は、2011年10月5〜7日にスペインのセヴィルで開催された「International Electronics Forum 2011」において登壇し、「当社はこれまで、Hynix Semiconductorと協業し、数々の大規模な計画に取り組んできた。2013年の夏にはフラッシュメモリの代替となるメモリスタを発表し、その後はSSD(Solid State Drive)市場にも参入していきたい」と語った。HPの広報担当者は、「メモリスタの製品ロードマップは未確定」としながらも、「2013年末までに商品化を目指したい」と明言している。
Williams氏によると、「メモリスタは、ビット変更や読み出し/書き込み時間、消費電力、耐久性などにおいて優れた性能を実現しており、フラッシュメモリの置き換えも十分可能だと考えている」という。同氏はさらに、「2014〜2015年にはDRAM市場を狙い、その後はSRAM市場に参入していく」と述べ、メモリスタがユニバーサルメモリとしての地位を確立するまでに時間はかからないとの見解を示した。
Williams氏は、適用するプロセス技術やメモリ容量など、HPとHynixの協業による取り組みの詳細については明言を避けており、「Hynixの製造工場において数百枚のウェハーを処理しており、これには大変満足している」と述べるにとどまった。ただし同氏は、最初に商品化するメモリスタについて、多層膜構造になる予定であることは明かしている。
大量生産が行われているフラッシュメモリ市場に対抗する上で、障壁となりそうなのがメモリスタの技術コストである。これについてWilliams氏は、「NRE(Non-Recurring Expense:開発費)の償却が済めば、ビット当たりの価格を1桁下げることが可能だ」と述べている。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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