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“ポストシリコン”狙うカーボンデバイス、性能も製造性も着実に向上プロセス技術 IEDM2011(2/2 ページ)

現在、半導体材料の圧倒的な主流はシリコンである。しかし、材料特性がシリコンとは大幅に異なる点を利用して新しい機能のデバイスを実現しようとする取り組みも進んでいる。先週ワシントンD.C.で開催された半導体デバイス技術に関する世界最大の国際会議「IEDM 2011」から、最新の研究成果をリポートする。

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200mmウエハーのラインでグラフェンICを作る

 グラフェンを使ったトランジスタの製作はこれまで、非常に小さな基板を使ったものがほとんどだった。いわゆる実験室レベルでの試作である。これに対してIBMは、一般的な半導体の製造ラインである直径200mmウエハーの生産ラインを利用してグラフェンFETと受動素子によるICを試作してみせた(Shu-Jen Han他、講演番号2.2)。

 ウエハーは高抵抗シリコンである。このウエハー上でグラフェンのFETとアルミニウム(Al)のコイルを集積して入力周波数信号を2倍にする逓倍回路を試作した。入力信号の周波数が1GHzのときに、2倍に相当する2GHzの出力信号を確認した。入力電力は0dBm、出力電力は−25dBmである。

図4
図4 グラフェンICの構造と製造工程 (クリックで拡大)
図5
図5 試作したグラフェンICの電子顕微鏡写真と出力周波数特性 (クリックで拡大)

チャネル長9nmのCNTトランジスタ

 カーボンナノチューブのデバイスでは、9nmと極めて短いカーボンナノチューブ(CNT)をチャネルに利用したトランジスタ(CNTトランジスタ)をIBMが試作した(Aaron D. Franklin他、講演番号23.7)。カーボンナノチューブの直径は1.3nmである。

 試作したトランジスタのオン電流(チャネル幅当たり)は1.76mA/μA(電源電圧0.4V)と高い。発表によると、チャネル長10nmのシリコンナノワイヤーによるトランジスタの4倍のオン電流を達成できたという。電流電圧特性は飽和特性を示しており、トランジスタとしての基本的な動作を確認できた段階である。速度や周波数などの動特性の確認は、これからになる。

図6
図6 カーボンナノチューブ(CNT)トランジスタの構造(左)と試作したトランジスタの電子顕微鏡写真(中央と右) (クリックで拡大)
図7
図7 試作したチャネル長9nmのCNTトランジスタのサブスレッショルド特性(左)と電流電圧特性(右) (クリックで拡大)

Profile

福田昭(ふくだ あきら)

テクノロジーライター。複数の技術情報誌で記者、副編集長、編集長を務めた後、フリーランスとして活動。電子(エレクトロニクス)技術分野をメインに、科学技術分野全体をカバーする。


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