高齢者向けサービスはNFCの新たな市場に、 音声アプリケーションに活用:無線通信技術 NFC
NFCを用いて、高齢者や視覚障害者の生活を支援しようという試みが始まっている。例えば、医薬品の包装に取り付けたNFCラベルに携帯電話機をかざすと、薬の情報が読み取れるだけでなく、その情報を音声で再生してくれるといったものだ。
人口の高齢化が進むに伴い、高齢者支援に特化したニーズも高まっている。例えば、人間の視力は年齢とともに衰えていく。フィンランドのVTT Technical Research Centre of Finlandは、視力が衰えた人たちの生活の支援に向けて、近距離の無線通信技術であるNFC(Near Field Communication)を用いた新しいアプリケーションの開発に取り組んできた。今回、こうした取り組みに賛同した関係者によって、音声ベースの革新的な商品認識システムや、医薬品や食品の情報を音声で読み上げる包装システムの試験が行われた。
現在では、製品とそのデジタル情報とをリンクさせるソリューションがかなり普及している。これにより、視覚障害者や視力が衰えたユーザーに限らず、あらゆるユーザーに向けて幅広い可能性が広がっている。例えば、食品の包装に、その食品の製造元からアレルギーの危険性に至るまで、個々の消費者に向けたさまざまな情報へのリンクを持たせることが可能だ。
VTTとフィンランドのTop Tunniste、スペインのTecnalia、ギリシャのDemokritosによる共同プロジェクト「HearMeFeelMe」は今回、NFC技術を採用したアプリケーションを幾つか発表した。例えば、あるアプリケーションは、ユーザーが自分の携帯電話機を医薬品の包装に取り付けたNFCラベルにかざすと、その薬品の情報や投薬量に関する情報がダウンロードされ、携帯電話機やPCで音声として聞くことができるという。今回のプロジェクトのエンドユーザーとして、Finnish Federation of the Visually Impaired(FFVI:フィンランド視覚障害者連盟)やCaritas Foundation、オウル(Oulu)市にある調剤薬局「Joutsen」、老人介護サービスを提供するスペインのSSIなどが参加した。
今回、ユーザーからの評価が最も高かったのは、Top Tunnistが披露した「Touch 'n' Tag」だった。音声メモ機能により、視覚障害を持つユーザーが、食品や日用品の情報を認識することができるというものだ。ユーザーが商品の包装に取り付けたNFCラベルに携帯電話機をかざすと、メモタグが記録され、情報が携帯電話機に読み込まれる。そして、携帯電話機をもう一度そのラベルにかざすと、記録された情報を音声で聞くことができるという。
今回の試験を実施した結果、このアプリケーションは、食品の包装で最も広く活用されたことが分かった。また、ユーザーの大半が、製品を認識したり製品情報を呼び出す上で役立ったと報告している。さらに、将来的には、ユーザー自身の言葉で必要な情報を記録することができるようになるかもしれない。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.