Micronとエルピーダ、提携すればDRAM業界は再編へ:ビジネスニュース 業界動向
Samsungがトップをひた走るDRAM業界だが、Micronとエルピーダの提携が実現すれば、そのSamsungを脅かす存在となるだろう。
米国の市場調査会社であるIHS iSuppliは、以前からうわさされているMicron Technologyとエルピーダメモリの提携が実現した場合、DRAM市場が劇的に変化するとみている。提携によって世界第2位の市場プレーヤが誕生することになり、現在業界トップに君臨しているSamsung Electronicsを脅かす存在になるという。
ここ数週間、Micronがエルピーダに資金を提供する、あるいはエルピーダを買収することについて交渉を進めているとの憶測が飛びかっていた。しかし、両社ともこの提携交渉のうわさについては否定している。エルピーダは現在、5四半期連続で赤字を計上し、多額の負債を抱えている状況にある。
iSuppliによると、Micronとエルピーダの提携が実現した場合、そのDRAMウエハーの生産能力は37万4000枚/月となる見込みで、世界のDRAM生産能力全体の28%を占めることになるという。一方、現在業界第1位のSamsungは、ウエハー生産能力が43万3000枚/月で、DRAM生産能力全体の33%を占めている。このため、Micronとエルピーダが提携すれば、Samsungに続く第2位の座を獲得することになる。
iSuppliによると、現在の世界DRAM生産能力のランキングでは、エルピーダが第3位、Micronが第4位に入っている。韓国のHynix Semiconductorは現在、DRAM生産能力全体の23%を占め、DRAMウエハー処理能力は30万枚/月である。しかし、DRAM市場が再編されることになれば、同社は第3位に順位を落とすことになる。
iSuppliでDRAM/メモリ部門の主席アナリストを務めるMike Howard氏は、「Micronとエルピーダが提携した場合、Samsungにとって、DRAM市場における最も強力なライバルが出現することになる」と指摘する。「Samsungはこれまで、DRAM生産能力のシェアにおいて、後を追うライバル企業と約10%の差をつけてきた。しかし、Micronとエルピーダが提携することになれば、Samsungのこの圧倒的な優位性は、これまでの半分となる5%に縮小されるだろう」(同氏)。
Howard氏は、Micronとエルピーダの提携には、エルピーダが抱えている負債をはじめ、さまざまな困難が立ちはだかると指摘している。エルピーダは、2011年第3四半期末の時点で40億米ドルの負債を抱えていた。DRAM業界では、工場の建設に膨大な費用が必要となるので、多額の負債を抱えるのは珍しいことではない。それでも、Micronは負債に対して懸念を示しているという。
Howard氏は、円高が続いていることや、Micronが台湾のNanya Technologyとの協業関係を継続していることについても、Micronとエルピーダが提携を進める上での障害になるとみている。さらにiSuppliは、Micronでチェアマン兼CEO(最高経営責任者)を務めていたSteve Appleton氏が2012年2月3日に急死したことで、状況がさらに複雑化したと指摘する。Appleton氏は、Micronとエルピーダとの提携を推進し、それにかかわる一連の取り引きを進める原動力となるはずだったからだ。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
関連キーワード
エルピーダ | DRAM | Samsung | iSuppli | 負債 | ビジネスニュース(EE Times Japan) | Hynix Semiconductor | Micron
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.