エルピーダの経営破綻でDRAM価格は上昇へ:ビジネスニュース 市場動向
複数の市場アナリストによると、エルピーダメモリが会社更生法の適用を申請したことは、DRAM市場に思わぬ好況をもたらすかもしれないという。
米国の市場調査会社であるIHS iSuppliによると、DRAM大手のエルピーダメモリが2012年2月27日に会社更生法の適用を申請したことを受け、他のDRAMメーカーにとっては今後、状況が好転していく見込みだという。2012年下半期には、DRAMの供給が減少することによって、平均販売価格(ASP)が上昇し、売上高も増加するとみられる。
iSuppliのメモリ/ストレージサービス部門によると、「エルピーダメモリが今後、生産能力全体の25%以上の稼働を停止した場合、世界のDRAM平均販売価格は、2012年上半期末には1.05米ドル、2012年末までにはその15.5%増となる1.21米ドルに上昇する見込みだという。また、エルピーダメモリが生産能力を縮小しない場合でも、2012年末のDRAM平均販売価格は、2012年上半期末からの8.5%増となる1.13米ドルに上昇すると予測されている。
エルピーダメモリは、会社更生法の適用を申請するに至った要因として、DRAMの平均販売価格が下落したことや、日本政府から2回目の救済措置を受けられなかったことなどを挙げた。ただし、今回の再建型の倒産処理に伴い、最終的に長期にわたって稼働を停止する生産能力の規模については、明らかにしていない。
iSuppliでDRAM/メモリ部門のシニア主席アナリストを務めるMike Howard氏は、発表資料の中で、「エルピーダメモリが、生産能力を縮小するという重要な決断を下した場合、DRAMの供給が不足して、販売価格が上昇するだろう。今回のエルピーダの更生法申請に伴い、DRAMの出荷数量が減少して価格が上昇すると、売上高が増加する。このため、2012年のDRAM市場の実績は、当初の予測を上回るとみられる」と述べている。
また同氏は、「エルピーダメモリの設備資産が最終的にどう処理されるかによって、2012年におけるDRAMの販売価格および売上高の成長率は、大きく左右されることになる。ただし、確実に言えるのは、今回のエルピーダメモリの更生法申請により、他のDRAMメーカー各社にとって、2012年はわずか10日前までは想像すらできなかった好況が期待できるということだ」と述べている。
米国の市場調査会社であるInternational Business Strategies(IBS)の創設者であり、CEO(最高経営責任者)を務めるHandel Jones氏は、2012年1月に、「2012年には、破産を申請するDRAMメーカーが1〜2社現れるだろう」との予測を発表していた。また、米国の市場調査会社であるIC Insightsでマーケットリサーチ担当バイスプレジデントを務めるBrian Matas氏も、同じく2012年1月に、「今後、DRAMメーカー間で整理統合が行われていくだろう。製造コストが増大することにより、競争力の弱いメーカーが市場から脱落するが、景気の変動を生み出していた過剰なまでの市場拡大は抑えられるかもしれない。この行き過ぎた市場拡大は、当初からDRAM市場を苦しめてきた」と述べている。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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