日本のエレクトロニクス産業、焼け野原から再出発しよう!:EETweets 岡村淳一のハイテクベンチャー七転八起 ―番外編―(3/4 ページ)
ここ数年で、エンジニアを取り巻く「パラダイム」は完全に変わりました。終身雇用という立場に安穏とすることができない時代に突入したことを、誰もが素直に受け入れなければなりません。多くのエンジニアは、もう気付いているはずです。エンジニアが全世界的な基準でしか評価されない時代に突入していることを……。
サバイバルは人脈から
幾つかの企業を渡り歩くと良く分かりますが、優れた人材を集めることは会社にとっては死活問題です。一方で、人材斡旋(あっせん)業者を使っても必要なレベルのエンジニアを調達するのが困難な場合が多くあります。時には、ソフトウェアを書けることと、RTLコードを書けることの区別がつかないようなエンジニアの斡旋(あっせん)紹介もありました。どんな企業でも、優れたエンジニアを集めるのは結構難しいことなのです。
専門性に優れたエンジニアであればあるほど、自分の市場価値は高いと考えがちですが、間違った市場に流れるとその価値は半分にも満たないのが現実。急なリストラに対処するためには、自らの専門価値を正当に評価してくれる市場を確保することが先決です。それには、世界基準での実績作りと、世界基準での人脈形成が必須だと思います。
何より、再就職に最も有利なのは人脈でつながったエンジニアの推薦があることです。企業の中にいる人物の推薦であれば会社側も安心して雇用できますし、再就職する本人にとってもその会社の状況や自分自身に求められているスキルを事前に判断できます。「LinkedIn」が海外のエンジニアにとって必須のSNSになっているのは、そうした事情があるからなのだと分析しています。
管理職だからエンジニアに戻るのは無理!?
「もう管理職だからエンジニアに戻るのは無理」という話もよく聞きます。大手企業の管理職で、自分のキャリアに市場価値があると自信を持って言える人はどれほどいるのでしょうか? 社内調整の能力がいくら優れていても、社外の人脈が無ければ市場価値はほとんどゼロでしょう。ここでもパラダイムは変わったのです。古巣に口添えするためだけの社内人脈には、市場価値はありません。
世界的な基準という観点で価値のある人脈とは、異なる業種をまたいだネットワークです。例えば、シリコンバレーに住む、EDAツールのベンチャー社長は3つの企業を起業する過程で得た豊富な人脈が武器です。小生も、その人脈の中からシリコンバレーのベンチャーキャピタルを当社に紹介してもらいました。自分自身で起業すると良く分かりますが、経営したり、事業を営んだり、人脈を増やしたりするなら、小さな企業で苦労するのが一番の早道です。もちろん自分自身でベンチャー企業を起こすことが最高の学習方法でしょう。
起業は、究極のサバイバル手段といえるでしょう。会社が生き残ることが、個人が生き残ることと直結しているのですから。そして、エンジニアが起業という選択肢を取ることは、もはや特別なことではありません(「総務省ICTベンチャー向け事業計画作成支援コース」の資料が役立ちます)。特に、半導体分野ではファウンダリーという生態系が生まれ、設計と製造が分離したので、アイデアを半導体に実装し、具現化するコストが大幅に下がりました。
当社のデジタルスピーカーシステム技術「Dnote」を実装したLSIが、大手ファウンダリーの提供するシャトルサービスを活用していることは言うまでもありません。
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