エルピーダ買収戦の行方は? アナリストが分析:ビジネスニュース(1/4 ページ)
日本のDRAM業界では地位を確立しているとはいえ、エルピーダは今なお巨額の赤字を抱えており、その企業価値は定かではない。それにもかかわらず、買収戦が続いている。現時点での最有力候補は、やはりMicronのようだ。
エルピーダメモリが2012年に2月に会社更生法の適用を申請したことを受け、同社の争奪戦が繰り広げられている。
2012年4月6日に締め切られた第2次入札には、Micron TechnologyとSK Hynixの他、共同応札した中国の投資会社であるHony Capitalと米国の非公開投資会社であるTPG Capitalも、支援企業の候補として残っているという。東芝は第1次入札に応札したが、候補から外れたと伝えられている。
エルピーダは最新の四半期決算で膨大な赤字を計上しており、同社が現時点でどれほどの価値を有しているのかは定かではない。同社のDRAM開発技術は半導体業界に驚きを与えたが、会社更生法の適用を申請した現在、その技術にどれほどの価値があるのかも不明だ。
EE Timesは、著名なメモリ業界アナリスト数名に、エルピーダの入札に参加した各企業の狙いや、エルピーダがそれらの企業に買収された場合にメモリ業界に与える影響などを聞いた。
- 最有力候補はMicron ―― IHS iSuppli DRAM/メモリ部門シニア主席アナリスト Mike Howard氏
- DRAM市場は一握りのプレーヤのみに? ―― Semico Research Jim Feldhan氏、Adrienne Downey氏
- もうDRAM製造工場は要らない ―― アナリスト Lane Mason氏
- 買収はDRAM業界にプラスをもたらす ―― Forward Insights Gregory Wong氏
最有力候補はMicron
- IHS iSuppli DRAM/メモリ部門シニア主席アナリスト Mike Howard氏
エルピーダの支援に名乗りを上げた企業のうち、最も有力な候補はMicron Technologyだと考えられる。エルピーダの生産能力を獲得すれば、同社は市場シェアを現在の約2倍となる20〜25%に拡大し、SK Hynixを凌いで世界第2位のDRAMメーカーになると予想される。さらに、エルピーダのモバイル機器向けDRAMのポートフォリオを獲得することで、後れを取っていた同分野での競争力を強化できる。ただし、Micron Technologyがエルピーダの製造設備を全て稼働するとは考えにくいため、DRAM市場全体の生産量は減少すると予想される。これは、他のDRAMメーカー各社にとって好機となるだろう。
第1次入札で落選した東芝も、エルピーダの買収を諦めてはいない。東芝は、MCP(Multi Chip Package)の製造に不可欠となるモバイル向けDRAMの充実したラインアップを取り込むことで、国内の生産能力を強化したい考えだ。東芝とエルピーダは共に日本企業であるため、両社の提携は日本国内の利益拡大に貢献することにもなると考えられる。しかし、両社の提携をより詳細に見てみると、全てがバラ色というわけではないようだ。エルピーダの広島工場は、東芝の工場と比べると遅れており、東芝の工場と同レベルの生産能力を備えるには大規模な投資が必要となる。また、モバイル向けDRAMを製造していないことは、これまでのところ、東芝のNAND戦略にとってそれほど大きく影響していない。東芝とエルピーダは共に日本企業でありながら、両社の間には企業文化に大きな違いがあり、共存していくことは現実的には難しいと思われる。東芝は10年前にDRAM事業から撤退しており、DRAM事業を再開するには政府による後押しが必要になるだろう。
SK Hynixも候補の1つではあるが、同社がエルピーダを買収する可能性はMicron Technologyや東芝に比べると低い。Micronと東芝はそれぞれ、台湾と日本に生産拠点を構えているが、SK Hynixは台湾や日本で工場を運営しておらず、既にモバイル向けDRAMの充実したポートフォリオを有している。
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