エンジニアが英語を放棄できない「重大で深刻な事情」:「英語に愛されないエンジニア」のための新行動論(3)(2/6 ページ)
今回は、皆さんの英語に対する漠然とした見えない不安や、将来、海外に放り出される可能性を、「目に見える不安」、すなわち「数値(確率)」として、きっちり提示したいと思います。私たちエンジニアの逃げ道が全てふさがれていることは明らかです。腹をくくって「英語に愛されないエンジニア」として、海外で戦う覚悟を決めましょう。
数値化の作業は難航
正直に申し上げますと私は、この数値化の作業をかなりナメていました。なぜかというと、「適当な数値データ」から、「穏当な想定シナリオ」を作って、「妥当な結論」を導き出すという作業は、私のような企業研究員の腕の見せ所だからです。そこでまず、調査の基礎(タネ)となる「適当な数値データ」を調べ始めたのですが、正直、青ざめました。
データが全然出てこないのです。「皆無(かいむ)」などというレベルではなく、「絶無(ぜつむ)」。調査対象は、大手英会話学校や各種の英語教育機関、文部科学省、総務省などです。数多くの資料をあさりましたが、全然ダメ。 「営業秘密」として管理されているのかもしれないと思いましたが、その理由が分かりません。「知られたら困る理由でもあるのだろうか」と邪推してしまいました。
仕方ないので、インターネット上の適当な資料の数値をいろいろといじった計算結果を、自分自身でも納得できないまま編集担当さんに送付したところ、1時間もしないうちに、データの出所の不明確さや、統計計算の不備を指摘するメールが飛んできました。 「うーむ……。さすがに通らないか。ましてや、読者を欺いたりしようものなら、エラいことになるのは間違いないな」という思いと、私の20年の研究員としてのプライドがシンクロして、私の中で「パチッ」とスイッチが入る音が聞こえました。
―― 基礎データがなければ、基礎データから作ってやる。どこにでも出向いて、どんな資料でも探して、誰にでも会って、どんな計算でもしてやる ―― と、その瞬間、私の思考回路は切り替わったのです。
徹底的に情報を収集
そこで、インターネットを使った資料収集はもちろんですが、さまざまな専門書店を回りました。特に、秋葉原の某書店には、大変ご迷惑をお掛けしました。私のポケットマネーでは到底買えない何万円もするぶ厚い資料を、1時間以上も食い入るように読んでいたのは私です。数値データは暗記して自宅まで持ち返らせていただきました。おわびと言ってはなんですが、何冊かの専門書籍(市場予測資料、TPPの解説本など)を購入いたしましたので、何とぞそれでお収めください。
研究所の若手研究員の諸君。確率計算の相談に乗ってくれてありがとう。君たちの計算アプローチは、今回のデータ分析に活用させてもらいました。そして、日本企業の海外進出の目的、意義、経済的効果、国益などについてご教授していただいた多くの皆さまに、この場を借りて感謝申し上げます。そして、私はと言えば、今年のゴールデンウィークは、エクセル(表計算ソフト)との闘いで終わりました。家族には本当に申し訳ないと思っています。しかし、「お父さんも、研究員として譲れない一線があった」のです。いつか分かってくれると信じています。
対象は短期の「海外出張者」
では、説明を始めさせて頂きます。調査対象を、「海外で仕事をしたいなんて一言も言っていない!」という人に限定するため、1年以上の海外赴任や、海外の観光旅行の人は対象外として、「1〜2週間程度の短期の海外出張者」だけに絞りました(図1)。法務省の統計データ*1)より、この対象者は、「短期商用・業務」の渡航人口である約260万人/年が該当すると考えます。これに対して、日本の労働者人口*2)は約6500万人ですので、「1〜2週間程度の短期の海外出張」の被害に遭う人は260万人/6500万人と計算でき、就労人口の……、あれ? たったの「4%」??
いきなり予想を覆す結果に、私はあぜんとしてしまいました。え〜コホン。若いエンジニアの皆さん。お騒がせして大変申し訳ありませんでした。「4%」なら大丈夫。きっと皆さんは逃げ切れます。国内でお互いぬくぬくとしながら、国内エンジニアとして生きていきましょう。
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……と、いきなり「最終回」のエンディングまで考えていましたよ(本当)。しかし、どう考えてもおかしいと思いました。私の周囲エンジニアが、しょっちゅう徹夜で作った英語の資料をキャリーケースに放り込んで、血色の悪い顔をしながら成田空港に向っているという現実と一致しないのです。そこで、再度、官公庁のデータをにらみつつ、仮説を立てながらエクセルに入力し直してみました。
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