エンジニアが英語を放棄できない「重大で深刻な事情」:「英語に愛されないエンジニア」のための新行動論(3)(3/6 ページ)
今回は、皆さんの英語に対する漠然とした見えない不安や、将来、海外に放り出される可能性を、「目に見える不安」、すなわち「数値(確率)」として、きっちり提示したいと思います。私たちエンジニアの逃げ道が全てふさがれていることは明らかです。腹をくくって「英語に愛されないエンジニア」として、海外で戦う覚悟を決めましょう。
海外に放り出される割合は何%?
ここで「1〜2週間程度の短期の海外出張」の被害に遭う人を、乱暴ですが、もっぱら製造業と小売卸売業に限定しました。根拠は、ある書籍*3)の中で「海外展開」という文字が出てきた分野(自動車、半導体、デジタル素材、コンビニ、専門店)から、無理やり引っ張りました。
製造業と小売卸売業の人口はそれぞれ1000万人で合計2000万人で、「短期商用・業務」の渡航人口である約260万人/年の内訳は、製造業が165万人/年、非製造業が95万人/年と推定できます*4)。従って、製造業に注目すると「1〜2週間程度の短期の海外出張」の被害に遭う確率は165万人/1000万人と計算でき、これだけでも先ほどの4%は17 %まで跳ね上がります。少し不安になってきたと思います(図2)。しかし、話はまだまだ終わりません。
海外展開の実績のある会社に就労している場合に限定すると、驚くような数値に変わってきます。現在、海外事業をしている法人の従業員合計数*5)が446万人で、そのうち、製造業が占める数が280万人、非製造業が166万人になっておりますので、この比率は、大体7:4となります。先ほどの「1〜2週間程度の短期の海外出張」の合計260万人のうち、7/11(63.6%)に相当する165万人程度が製造業の方であると推定すると「1〜2週間程度の短期の海外出張」の被害に遭う確率は、
165万人 / 280万人=59%
どうですか。一気に青ざめるような数字になってきたでしょう。念の為、個人的に 2つの製造メーカーを調べてみたのですが、1社は29%、もう1社は58%との回答をいただきましたので、「あまり大きく外れていないかなぁ」と考えています。しかし、これは、あくまで1年間だけの話です(図3)。
最楽観的な値「17%」の意味
最も楽観的な値17%とは、1年間で83%は逃げられるという確率を示しているにすぎません。2年間連続して逃げられる確率は、83%を2回かけた数値69%となります。
サイコロで考えてみましょう。「毎年、元旦の1月1日にサイコロを振って、『1』の目が出たら、その年は海外に出張しなければならない」という話と同じです。サイコロで「1」の目が出る確率は1/6(偶然にも17%)ですので、「1」が出ない確率は83%になります。2年連続で「1」が出ない確率は、83%の83%で、69%となるわけです。3年間連続なら3乗、4年連続なら4乗です。5年連続で「1」が出ない確率は39%になります。
つまり、5年連続で、短期海外出張から逃げ切れる確率は39%しかないと言うことで、それは、61%の確率で「海外に追い出される」ことになります。 一方で最も悲観的な数値59%を使うと、5年連続で逃げ切れる確率は1%になります。これは「逃げ切れない」と同じ意味です。第1回で申し上げた通り、エンジニアとしての余命が「長い」ほど、不利なのは明快です。
ただし、上記の内容は多くのデータをかき集めて、仮説の上に仮説を重ねた計算結果です。例えば、現実には短期渡航を繰り返すリピーターの存在を考慮する必要がありますが、これは確率の議論とは別の問題として、今回は取り上げていません。
そこで、公的機関や教育機関、有意識者の方で、「正確な数値データ」をご提供いただけるお申し出があれば、私は、どこにでも出向いて、喜んでお話をおうかがいし、即座にデータを修正する用意があります。本連載のデータ解析は「週末研究員」として行っておりますので、休日をご指定いただければ、スターバックスから、牛丼の吉野家、公園のベンチに至るまで、どこにでも参上いたします。ただし、ホテルのレストランなどは、江端家の財政上、少々難しいことをあらかじめご了承ください。
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