データセンター用SSDのコストが1/7に、ReRAM活用の新技術を中央大が開発:メモリ/ストレージ技術 SSD(2/2 ページ)
SSDのコストを劇的に削減しながら、性能と寿命も飛躍的に向上させられる技術が登場した。フラッシュメモリに新世代メモリ素子であるReRAMを組み合わせるハイブリッド型のSSDである。この成果を達成できたのは、これらメモリ素子自体の改良ではなく、データの読み書きを制御するコントローラを工夫したためである。
金融向けサーバの実データで評価
今回は、コンピュータシミュレーション上でNAND型フラッシュメモリとReRAM、メモリコントローラそれぞれのビヘイビアモデルを使って、このアーキテクチャとアルゴリズムの効果を検証した。すなわちSSDの実機モジュールは試作していない。
このシミュレーションで想定したモジュール構成は、フラッシュが1Tビット、ReRAMが数Gビットである。このReRAMは、最終的にフラッシュメモリに書き込むデータを一時的に保持するためのキャッシュメモリとして機能するだけでなく、書き換え頻度の高いデータなどを永続的に保持するストレージメモリの役割も果たす。さらに、制御アルゴリズムのワークメモリなどとして使う小規模なDRAMも組み合わせた。
ReRAM混在型SSDのアーキテクチャ NAND型フラッシュメモリとReRAMの他、ワークメモリとして使うDRAMと、これらのメモリ群を制御するSSDコントローラの各チップを3次元積層した構造をとる。出典:中央大学
このSSDモジュールのモデルに対し、金融業界向けサーバの実データをサンプルパターンとして与えて価値指標を評価した。書き込み速度については、SSDの総容量の3倍に相当するデータを書き込んで断片化による経時劣化が顕在化した状態のモデルで調べたところ、フラッシュメモリだけで構成したSSDに比べて11倍高い速度が得られた。
消費電力については、同条件において単位データサイズ当たり93%削減できた。ただし93%という数字は、モジュールを構成する各要素をシリコン貫通電極(TSV:Through Silicon Vias)を使って3次元積層した場合である。2次元平面上に配置して相互接続する場合は、各要素をつなぐ入出力インタフェースの消費電力が比較的大きくなり、消費電力の低減効果は79%にとどまるという。
SSD用ReRAMにDRAM並みの書き換え寿命は不要
寿命については、フラッシュメモリへの書き込み回数を1/6.9(約1/7)に抑えられることを確かめた。このときReRAMの書き込み回数はフラッシュメモリの28倍程度だった。従って、仮にフラッシュメモリの書き換え寿命を3000回としても、ReRAMはその28倍なので10万回を下回る程度(3000回×28倍=8万4000回)の書き換え寿命を確保できれば十分だという計算になる。
一般にDRAMは書き換え寿命が1016回程度と高水準なのに対し、ReRAMは106回といったオーダーにとどまっており、大きな隔たりがあった。しかし今回の竹内氏らの検証結果によれば、ストレージクラスのメモリなら、10万回(105)で実用に足りることになる。「このアーキテクチャのSSDに向けたReRAMでは、DRAMのような書き換え寿命は必要ない。それよりも、微細化を進めて容量を増やし、早く実用化する方に主眼を置くべきだ」(同氏)。
なお今回の研究は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業である「高速不揮発メモリ機能技術開発」において実施した。
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