スモールセルの完全なる実用化はまだ遠い? 鍵は干渉抑制か:無線通信技術
スマートフォンなどの普及により増加の一途をたどるモバイルトラフィックに対応するには、スモールセル方式の無線基地局が大きな役割を果たす。ただし、完全な実用化に至るまでにはまだ多くの課題が残されているという。
スモールセル方式の無線基地局は、負荷が増大するモバイルデータネットワークの混雑状態を緩和する上で、重要な鍵となっている。しかし、実用化に至るまでには、エンジニアが対応すべき課題が山積みのようだ。
規格推進団体であるNGMN(Next Generation Mobile Networks) Allianceが米国カリフォルニア州サンフランシスコで開催した「NGMN Industry Conference & Exhibition」(2012年6月13〜15日)で、Powerwave Technologiesは、同社のスモールセル基地局を披露した。「業界で初めて出荷されたスモールセル基地局の1つだ」と主張する。ただし、この基地局は現在、米国の政府機関に向けたスモールセルネットワークにおいて採用されているものの、既存のマクロセル基地局と相互運用することはできないという。
既存の基地局サプライヤは、Powerwave Technologiesのような企業がマクロセル基地局に接続するために必要なX2インタフェースについて、まだ詳細を明かしていない。LTE(Long Term Evolution)の「Release 10」では、X2のセル間干渉抑制に関する規格を定めているが、通信事業者がRelease 10の導入を開始するのは、2013年になる見込みだ。
Qualcommは、セル間干渉抑制技術に関するイベントで、開発中のチップセットのデモを披露した。米国カリフォルニア州サンディエゴにある同社の本社に設置した基地局に、そのチップセットを搭載したという。同社は、チップセットの出荷開始時期については明らかにしていない。
韓国の携帯通信事業者であるKTでネットワーク戦略担当バイスプレジデントを務めるAndrew Jun氏によると、携帯電話機のサービスエリアのうちセル間干渉の影響を受ける割合は、マクロセル基地局では25%だが、マクロセル基地局とスモールセル基地局を併用すると40%に増大するという。KTは、144〜1000のセル基地局で構成される集中基地局を提供している。
Jun氏は、「当社が仮想基地局を導入したのは、1カ所で複数のセル基地局を管理することにより、データ伝送を調整し、特にセル端で干渉を抑制できるためだ」と説明している。
Powerwave TechnologiesのチーフテクノロジストであるKhurram Sheikh氏は、イベントのパネルセッションに参加し、「スモールセル基地局とマクロセル基地局の相互運用性がいつ実現するのか、その時期だけが問題だ。当社のスモールセル基地局は、LTEとWi-Fiの両方をサポートするため、通信事業者のネットワーク容量を15倍に高められるだけでなく、電池寿命も5倍に延長できる」と主張した。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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