「クラウドとNFCで家電が変わる」、パナソニックがスマート家電を一挙発売:ビジネスニュース 企業動向
スマートフォンの専用アプリから、冷蔵庫の扉の開閉数をチェックしたり、洗濯機に投入する洗剤・柔軟剤の適量をお気に入りの銘柄を指定して確かめたり、外出先から自宅のエアコンをオン/オフしたり……。パナソニックがクラウド経由でさまざまな機能を利用できる「スマート家電」の新製品群を発表した。
「80年以上におよぶ歴史の中で、パナソニックの家電が新しい可能性を秘めた全く新しいステージに切り替わる瞬間だ」――。パナソニックは2012年8月21日、消費者がスマートフォンに搭載した専用アプリ経由で同社のクラウドサービスに接続し、さまざまな機能を利用できる家電群を「スマート家電」と呼んで市場に投入すると発表した。ルームエアコンと冷蔵庫、洗濯乾燥機、体組成計、活動量計、血圧計の6つの製品群で、2012年9月25日〜10月20日にかけて順次発売。2014年度に260万台、2000億円の売り上げを目指す。
消費者は、手持ちのスマートフォンにパナソニックが無償提供する専用アプリ「パナソニックスマートアプリ」をインストールし、購入した家電の利用者登録をすることで、同社のクラウドサーバを介した各種のスマート機能を使えるようになる。
例えばエアコンでは、スマートフォンのアプリで外出先から遠隔で運転のオン/オフを操作したり、切り忘れを確認したりすることが可能だ。冷蔵庫については、アプリ上で扉の開閉回数を確認したり、同社の省エネ機能「エコナビ」の稼働率を確認することができ、「日々の節電意識の向上に活用できる」(同社)。洗濯機では、洗剤と柔軟剤の種類を記憶させておき、最適な洗浄効果が得られる設定を自動的に行う。ヘルスケアに向けた体組成計、活動量計、血圧計の3つの製品群については、いずれも日々の測定データを記録・管理できる機能を提供する。また、これら6つの製品群ともに、使用方法が分からない場合や、エラー表示が出た際には、取扱説明書を探さなくてもスマートフォンの画面で操作方法を確認することが可能だ。
スマホと家電はNFCでつなぐ
ルームエアコンを除く5つの製品群については、スマートフォンとの接続に近距離の無線通信技術「NFC(Near Field Communication)」を採用した。その背景についてパナソニックの役員でアプライアンスマーケティング本部の本部長を務める中島幸男氏は、次のように説明した。
「当社では“白物家電を変える”ことを目指し、2010年からプロジェクトを組んで、新たな提供価値を模索してきた。そこで着目したのがNFCだ。いわゆる“おサイフケータイ”の技術で、携帯電話機やスマートフォンに搭載される国際規格になっている。今後、多くのスマートフォンに搭載されて普及が加速し、誰もが使える技術になるだろう。そのNFCによって家電がインターネット経由でクラウドとつながれば、消費者に新たな価値やサービスを提供できるようになる。消費者は機器の設定やデータのやりとりといった煩わしい作業から解放され、タッチするだけの簡単な操作で済むようになる」(中島氏)。
スマートフォンとパナソニックのクラウドサーバは、携帯電話の回線を使って接続する。すなわち同社のスマート家電は、家電自体が直接インターネットにつながるわけではなく、従ってIP(Internet Protocol)アドレスも備えていない。スマートフォンがいわば“仲介役”となってクラウドサーバと家電をつなぐ。スマートフォンと家電の間の情報のやりとりは、スマートフォンを家電のフロントパネル部に触れさせる動作で完了する。
なおスマートフォンのうち対応するプラットフォームについては、接続技術にNFCを採用していることから、現在のところAndroid OSだけである。現在のところNCFに対応していないAppleのiOSが今後NFCに対応した場合は、「(iOS対応を)検討する」(同社)とした。
エアコンは特定小電力無線を利用
6つの製品群のうちルームエアコンについては、接続技術にNFCではなく特定小電力無線による無線方式を採用した。そのためAndroidに加えて、Appleのスマートフォン「iPhone」の既存機種でも利用可能なアプリを提供する。
エアコンの室内機に無線アダプタを取り付けるとともに、消費者の宅内にあるブロードバンドルータに専用の無線ゲートウェイ装置を接続して使う。すなわち、スマートフォンとエアコンの間の接続は次のようになる。専用アプリから携帯電話の回線を経由してクラウドサーバにつなぎ、クラウドサーバから宅内ブロードバンドルータと無線ゲートウェイ、無線アダプタを介してエアコンに接続する仕組みだ。
宅内の無線接続にWi-Fi(無線LAN)でははく特定小電力無線を採用した理由については、「3階建ての一般的な住宅でも、特定小電力無線の通信可能範囲であれば一軒全体をカバーできる。固定電話の親機と子機の無線接続にも使われていて実績があり、1台の無線ゲートウェイで最大8台を収容できることもポイントだった」(同社)と説明した。
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