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どんな姿にも変形できる極小ロボット、タンパク質に着想を得てMITが開発【動画あり】ロボット技術

米大学の研究チームが、自らを折り畳んでさまざまな形に変化する極小ロボットを開発した。タンパク質から着想を得たものだという。プログラムされた形状に自ら変化する、究極の素材を開発する足掛かりとなるかもしれない。

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 「人生は芸術を模倣する」という名言を残した英国の劇作家/小説家オスカー・ワイルドが、この極小ロボット「Milli-Motein」を見たとしたら、一体どう思うだろうか?

 Milli-Moteinは、米マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームがタンパク質の構造に着想を得て開発したロボットだ。タンパク質は、非常に複雑な形に自らを“折り畳む”性質を持っている。Milli-Moteinは、モーターを搭載した小さな「モジュール」を鎖のようにいくつもつなぎ合わせた構造をとる。これでタンパク質のように自らを折り畳み、ロボットの姿をほぼどんな形にも変化させられるという。なお、Milli-Moteinという名前は、“タンパク質(protein)の構造から着想を得た、モーターで駆動する(motorized)ミリメーターサイズ(millimeter-sized)の装置”という意味でつけられた。


このMilli-Moteinは、4つのモジュールをつなげている。出典:MIT Center for Bits and Atoms

 Milli-Moteinの基本的な形状を見ると、それほど大それたものにはみえない。まるで、リングや長細い部品、糸巻きのような部品などで構成されたスクラップ金属のようだ。しかし、この小さなロボットは、極めて複雑な形状に姿を変えることができるという。

 これを開発したのは、MITのCenter for Bits and Atomsを率いるNeil Gershenfeld氏と、客員研究員のAra Knaian氏、大学院生のKenneth Cheung氏による研究チームである。同チームは、永久磁石と電磁石を組み合わせて使う「エレクトロパーマネントモーター」という新しい駆動システムを発明した。形状を変化させる時だけ電力を消費し、それ以外はオフの時もオンの時も電力を消費せずに形状を維持できるシステムだという。

 研究グループによると、このエレクトロパーマネントモーターは、スクラップ工場で自動車を持ち上げる大型の電磁石によく似ているという。強力な磁石と弱い磁石を組み合わせることで、磁石の作用を必要に応じて高めたり打ち消したりできるのだ。

 Milli-Moteinのモジュールは、「固定部分」と「可動部分」から構成されている。数個の永久磁石と、環状に配置した電磁石とを組み合わせることで、可動部分を駆動する。1個1個のモジュールが右に回転したり左に回転したり、元に戻ったりすることで、Milli-Moteinはさまざまな形状を作れるという仕組みである。Knaian氏は、「電力を使うのは、モジュールの形状を変化させる時だけだ。このため、極めて高いエネルギー効率を実現できる」と説明する。

 Milli-Moteinは、Cheung氏やMITの教授陣、学生たちが仮説として考えていた原理に基づいて開発された。その原理とは、「数学的には、十分な長さのある1本のストリング(ひもや弦のようなもの)は、どのような3次元形状でも形成することが可能だ」というものである。

 Gershenfeld氏は、「Milli-Moteinは、“データを物体に変える”ための新しい手法も提示している」と述べる。研究チームの究極の目標は、「人間が材料や部品から物を製造するのではなく、材料そのものをプログラミングし、材料自らが物を形成するようになること」だという。タンパク質のごとく、プログラミングされた情報に従って自ら形状を変化させる、究極の“プログラム可能な素材”が登場する日がいつかくるかもしれない。

MITがYouTubeで公開している動画。Milli-Moteinが形を変える様子も。

【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】

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