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この10人がエレクトロニクス業界を変える、化学結合の撮影者から“アバター”までEE Timesが選ぶ2013年の注目人物(2/3 ページ)

人工知能、ロボット、化学、センシング技術――。日進月歩のエレクトロニクス分野を、さらに大きく変える可能性を秘めた10人紹介する。

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Tony Fadell氏:Nest

 Tony Fadell氏こそ、まさに現代の先駆者と言っていいだろう。同氏はRoyal Philips Electronicsでモバイルコンピューティング部門を立ち上げ、その後Appleに加わり、Steve Jobs氏の直属の部下として、第18世代までの「iPod」と第3世代までの「iPhone」の責任者を務めた。



出典:Nest

 現在、Fadell氏は、Nestの設立者としてスマートシステムを開発している。同氏が開発した“学習するサーモスタット”は、将来の普及が見込まれるインテリジェントシステムの一例である。IDC(International Data Corporation)によると、2015年までに全ての電子機器の30%はインテリジェント機器になることが予測されるという。多くの先駆的企業のスマートシステムは大幅に進歩を遂げているが、Nestほど積極的な提案を行っている企業はない。同社が提案するスマートサーモスタットは、ユーザーの生活パターンを学習し、それに合わせて室温を調節する。さらに、家の中の暖房器具やエアコン、換気システムに、スマートフォンから無線で遠隔操作することも可能である。

 Fadell氏は、空いた時間を利用して、米国のシリコンバレーに拠点を置く複数のベンチャー企業に、スマートモバイルやグリーンテクノロジで成功する方法についてアドバイスを行っている。


関連記事:2012〜13年は目が離せない!! 新たな社会インフラ導入へ無線技術の準備整う


Steve Nasiri氏:InvenSense

 Steve Nasiri氏は、InvenSenseを設立する前は、Sen-Sym、NovaSensor、Integrated Sensor Solutionsなどのベンチャー企業5社で、MEMSセンサーを使用したモーション処理技術の開発を最前線に立って続けてきた人物だ。

 同氏は、MEMSチップと、同チップを制御するASICを接合する「Nasiriプロセス」技術を開発し、製造コストが低く使用寿命の長い、スケーラブルな密封型システムを実現した。

 このNasiri技術をはじめとし、InvenSenseは世界初の2軸ジャイロ(角速度)センサー、世界初の3軸ジャイロセンサー、世界初の6軸ジャイロ/加速度モーションプロセッサ、世界初の9軸ジャイロ/加速度/コンパスモーションプロセッサを開発し、常に競合他社を一歩リードしてきた。

 そして、Nasiri氏の最大の業績は、MEMSモーション処理技術を、従来とは異なるアプリケーション分野に適用したことである。同社の優れた技術は、手首をひねることで回転方向を変えられるBlack & Deckerの電動ドライバを実現した(関連記事:鍵は「情報通信」、ネットワーク社会はさらなる進化へ)。

 Nasiri氏の今後の計画は極秘のようだが、この先10年間は、MEMS技術を人間のあらゆる動きに対応できるように広げていくようだ。同氏は最近、InvenSenseのCEOを辞任したが、引き続き取締役を務めている。


Black & Deckerの電動ドライバを持つNasiri氏 出典:InvenSense

関連記事:MEMSが巻き起こすセンサーフュージョン、ソフトウェアベースの手法を米社が提案


Dharmendra Modha氏:IBM


出典:IBM

 Dharmendra Modha氏は、IBMのアルマデン研究所でコグニティブコンピューティング部門のマネジャーを務めている。同氏の目標は、「脳をリバースエンジニアリングする(詳しく調べる)ことによって心をエンジニアリングする(情報処理する)」ことだ。

 Modha氏は以前、企業向けストレージコントローラや、データマイニング/視覚化システムである「eClassifier」向けのキャッシュアルゴリズムを開発し、既に現在のコンピューティング分野に多大な貢献をした人物でもある。

 現在、Modha氏のグループは、人間の脳をモデル化したコグニティブコンピュータである「コグナイザ」を開発中である。同氏は、IBMのスーパーコンピュータで脳のシミュレーションを行い、次に、人間の脳の神経回路網を模倣したハードウェアマイクロチップを搭載したシステムでエミュレートするという。Modha氏の指揮の下、IBMは既にネコの脳全体および人間の脳の白質のシミュレーションを完了させた。その他、DARPAのSyNAPSEプログラム*1)から助成金を受け、初代コグナイザマイクロチップを試作した。

 Modha氏は今後10年間で、人間の脳全体を模倣できるようにシミュレーションの規模を拡大し、コグナイザマイクロチップを使用して、現在のコンピューティングを根本から変えるハードウェアエミュレーションを行う計画である。

*1)DARPA:Defense Advanced Research Project Agency(米国防高等研究計画局)
SyNAPSE:Systems of Neuromorphic Adaptive Plastic Scalable Electronics(神経形態学的電子工学システム)


関連記事:脳波で操るテレビ、Haierがデモを披露


Wireless@MIT:米MIT


出典:MIT

 米マサチューセッツ工科大学(MIT)のCenter for Wireless Networks and Mobile Computing(Wireless@MIT)は、MITでコンピュータ科学/人工知能研究所の教授を務めるDina Katabi氏とHari Balakrishnan氏の主導の下、次世代モバイル機器の前に立ちはだかる問題の解決を目指す研究センターだ。Wireless@MITは、近未来的な外観を持つ建物であるStata Center for Computer, Information and Intelligence Sciencesに入っている。

 今後10年間で、Katabi氏とBalakrishnan氏は、MITの教授陣や大学院生をはじめ、Wireless@MITと提携しているAmazon、Cisco Systems、Intel、MediaTek、Microsoft Research、STMicroelectronics、Telefonicaとともに、現在の無線技術が抱える問題の解決に取り組む。

 Katabi氏とBalakrishnan氏は、3つの目標を掲げている。1つ目は、既存のチャネルの通信帯域幅を10倍に増やすことによって帯域幅のひっ迫を解決すること。2つ目は、モバイル機器の消費電力を大幅に削減して電池による連続駆動時間を数日ではなく数週間に延ばすこと。3つ目は、ネットワークの変動に速やかに対応できる新しいアプリを開発し、現在はユーザーが我慢しているフリーズや誤作動、動作速度の低下を解消することである。


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