「新興国の電子部品メーカーに対抗する」、村田製作所が東光と東京電波を傘下に:ビジネスニュース 企業動向
村田製作所は、インダクタ部品大手の東光を連結子会社化するとともに、水晶振動子大手の東京電波を完全子会社化すると発表した。「成長著しい新興国の電子部品メーカーに対抗する体制作り」(村田製作所社長の村田恒夫氏)が狙いだ。
村田製作所は2013年2月13日、インダクタ部品大手の東光を連結子会社化するとともに、水晶振動子大手の東京電波を完全子会社化(関連記事)すると発表した。村田製作所の2012年度(2013年3月期)の連結売上高は約6650億円を見込んでいる。これに、東光の2013年度(2013年12月期)売上高見込みである290億円と、東京電波の2012年度(2013年3月期)売上高見込みである95億円を加えれば、7030億円まで売上高規模が拡大することになる。
村田製作所社長の村田恒夫氏は、東京都内で開いた会見に出席し、「現在、世界の電子部品市場における日本の電子部品メーカーのシェアは約40%。かつてはもっと高い数字だったが、新興国の電子部品メーカーの成長により、徐々に落ち込んできている。今回の子会社化によって、東光と東京電波の高度な技術を世界市場で販売できる体制を構築し、新興国の電子部品メーカーに対抗していきたい」と語った。
モジュール製品の高機能化も容易に
村田製作所は、両社の子会社化によって、東光が得意とするメタルアロイなどの磁性体材料や巻き線技術を用いたパワーインダクタ、東京電波が有する高精度の水晶振動子を活用した製品展開が可能になる。
さらに、市場が急拡大するスマートフォンやタブレット端末向けモジュール製品の高機能化も実現しやすくなるとみられる。村田製作所の好調な業績は、Appleのスマートフォン「iPhone」などに採用されている、Wi-FiとBluetooth機能を統括した無線モジュール(「iPhone 5」の製品解剖記事)がけん引していると言われている。
東光と東京電波は、村田製作所の販売網を生かした世界市場での製品拡販が可能になる。村田製作所の生産技術によって生産性の向上やコスト競争力の強化も図れる上に、経営管理ノウハウやマーケティング手法を取り入れられることもメリットになる。
今回の子会社化は、東光と東京電波で手法が異なる。東光については、公開買い付けによって、議決権の過半数の株式取得(50.72%)を目指す。村田製作所は2012年3月、第三者割当増資による議決権の15.88%に相当する東光の株式取得と業務提携を発表している。このため、公開買い付け終了後には、議決権の66.6%の株式を所有することになる。公開買い付けは1株当たり300円で行うため、約174億円の資金が必要になる。また、東光の連結子会社化は、世界各国の法制に対応する作業に時間を要するため、「2013年10月ごろに完了する見通し」(村田氏)という。
東京電波の完全子会社化は、株式交換によって行う。このため村田製作所が資金投入する必要はない。村田製作所の株価を現在の約6000円とすると、株式交換による東京電波の買収額は約37億円になる。完全子会社化は、2013年6月26日に開催される東京電波の定時株主総会で承認された後、同年8月1日に発効する。このため、7月29日には、東京証券取引所一部における東京電波の株式上場が廃止される予定だ。
村田製作所と東京電波は、2009年8月に資本業務提携を、2011年5月に包括提携契約を発表するなど、連携を深めてきた。東京電波の水晶素子と村田製作所のパッケージング技術を組み合わせた共同開発商品である水晶発振子「HCR」は、既に年間30億円まで売り上げを規模を拡大している。
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