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【ESEC2013】ルネサス再建の先駆事例へ、スマートバイオ向けプラットフォームをデモセンシング技術

ルネサス エレクトロニクスは、単純な半導体デバイス販売ビジネスだけでなく、「すぐに半導体製品が使える」ように、ソフトウェア技術やモジュール化技術などを含めたソリューション型ビジネスモデルを強化している。その一環として、「スマートバイオ」に向けたソリューション構築を進め、「第16回 組込みシステム開発技術展(ESEC2013)」(2013年5月8〜10日、東京ビッグサイト)で畜産用途向け生体モニタリングシステムの展示を行った。

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 経営再建中にあるルネサス エレクトロニクスは、新たなビジネスモデルの創出を急いでいる。マイコン、アナログ&パワー半導体といった主力の半導体製品/技術をベースとしながら、半導体製品を使用する上で不可欠な周辺デバイスやソフトウェアを、協力企業との連携も含め用意した「ソリューション・プラットフォーム」の構築を強化している。半導体デバイスが高度化するとともに高まる「半導体製品をすぐに、簡単に使いたい」という市場要求に応えることで、ビジネス拡大を目指す。

 ソリューション・プラットフォームは、競争力の高いデバイス技術が生かせ、かつ、成長が見込まれる市場として「スマート社会」がターゲット。スマート社会を構成する「スマートエネルギー」「スマートホーム」などに複数分野に向けたソリューションプラットフォームの開発を進める。「スマートバイオ」もその1分野である。

 スマートバイオとは、畜産や農産といった食に関わる産業を、センサーネットワークなどでスマート化するという考え。効率良く、食の安全、安心をより高めようなどとするものだ。

 ルネサスでは2〜3年前から、スマートバイオに向けたソリューション・プラットフォームとして、家畜/ペットといった生体や農場の環境をモニタリングするセンサーノードソリューションの構築を進めてきた。家畜/ペットに装着するセンサーモジュール、環境情報を取得するセンサー端末、センサーから情報を収集しクラウド環境に伝送するコンセントレータ(ゲートウェイ)といったハードウェアと、各ハードウェアに搭載するソフトウェアを協力企業と共に開発し、一元的に提供できるソリューションを整えつつある。

 その1つが、実証実験を重ねて実用化段階にある「牛を飼う牧場に向けたソリューション」であり、2013年5月8〜10日に東京ビッグサイトで開催された「第16回 組込みシステム開発技術展(ESEC2013)」でデモを公開した。

生体/環境モニタリングソリューションの構成イメージ 出典:ルネサス エレクトロニクス / 右は、ESEC2013でのデモの様子。牛に模したネズミのおもちゃに小型センサーモジュールを装着し、おもちゃの動きなどの情報を写真奥のコンセントレータを介してクラウドネットワークへ伝達した (クリックで拡大)

 同ソリューションは、牛に装着する「小型センサーモジュール」(Livestock Monitoring)、牧場の環境状態を収集する「フィールドポスト」(Field Post)、「コンセントレータ」と主に3つの要素で構成する。小型センサーモジュールは、牛の動きを検知する加速度センサーと体温を測る温度センサー、核となるマイコンに「RL78」を搭載する。コンセントレータまでの通信手段として、通信距離の長い920MHz帯無線通信機能を備える。920MHz帯無線通信用のRF ICは、アナログ・デバイセズの「ADF-7023-J」を搭載し、ソリューション・プラットフォーム構築に向け積極的に協力企業のリソースを活用していこうとする姿勢も見える。

 ただ、ハードウェア的には、小型・低消費電力という特徴を備えるものの、他にもありそうなモジュールに見える。「半導体製品をすぐに、簡単に使いたい」という市場要求に応えるべく開発を進めているソリューション・プラットフォームであり、機能、仕組みでの特徴を備える。

 例えば、センサー情報の伝達方法。センサー端末の多くは、センサーからの生のデータを、クラウドなどホスト側へ送信する。サイズ、消費電力、コストの観点から、センサー端末側にデータを処理、解析できる高性能なプロセッサ/マイコンを搭載できないためだ。しかし「牧場では、1000頭を超える牛が飼われている。1000個のセンサー端末からデータ量の多い生データを吸い上げると必ず通信容量が足りなくなる」とし、同モジュールでは、小型マイコンのRL78でセンサー情報を処理、解析する仕組みを採用した。

 処理性能が限られるRL78でのデータ解析となるが、充実した解析機能を備える。牛の活動量を算出するだけでなく、加速度センサー情報を周波数変換し行動パターンも割り出す。牛が「歩行しているのか」「寝ているのか」「何かにぶつかっているのか」などを解析し、解析した情報だけをホスト側に伝達する。「周波数パターンから口蹄(こうてい)疫に感染した牛も特定できる」という。これら解析アルゴリズムは、大学などとの実証実験の中で、ルネサス独自に開発したとし、ハードウェア製品と共に、独自の付加価値として提供できる。

デモしたセンサーモジュール(Livestock Monitoring)と「フィールドポスト」(Field Post)の機能イメージ (クリックで拡大) 出典:ルネサス エレクトロニクス

 この生体モニタリング用センサーモジュールは、牛に限らず、さまざまな動物への応用も進めていて、養鶏場などでの鳥インフルエンザ対策にも効果があるという。「鳥インフルエンザに感染した鳥は、まず平熱の40℃から42℃に短時間で上昇する。モジュールには、高分解能のA-Dコンバータが備わっていて、0.02℃単位で体温を監視可能。他の鳥に伝染する前に、感染の疑われる鳥を隔離するといった対策が講じられる」という。

 ルネサスでは、今後も実証実験などを重ねて、さまざまな生体に対応したソリューションの構築を進めるとともに、モジュールのさらなる小型化など、ハード、ソフト両面での改良を進めていく。ビジネス展開としても「単純に牧場や畜産業者に対し数千、数万という数の動物に装着するセンサーとして販売するのであれば、コスト的に見合わないだろう。しかし、口蹄疫や鳥インフルエンザなど大きなリスクを防ぎたい行政や保険会社などにとっては、費用対効果が十分に見込める投資規模になるだろう。販売面でも新たな形を模索していく」(同社)としている。


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